ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月05日(土) 7話 『人工環礁』




ここは人工環礁のスラム街。
一人の男が小さなスクラップ屋を営んでいる。
廃品から使えるパーツを選んで、新品同様の製品を組み立てた。
彼の腕前は確かで、評判が良かった。
同業者よりも仲買人の買値が高かったのは信頼の証拠。

彼はここへ来る前のことを誰にも話さない。
スラムに住む者にとって、過去はたいていタブーであった。
今日も仲買人と酒を酌み交わし、世間話をしている。

「なぁ、もう聴いたか?」

「……」

「南の島(人工環礁)が海賊に略奪されたんだとよ」

「あの鉄壁の街がですか?」

「そりゃあ並大抵のことでは落ちないさ。
 だけどもここんとこの海賊ときたら食い詰めてヤケクソだからな、
 死に物狂いなんだろうよ」

「なら、ここも…じきですね」

「ブルジョア連中はとっくに逃げ出したよ」

「私達貧しい者は、船さえ持っていませんから、
 逃げ様がないですね。どうなりましょうか?」

「まあ、女子供と病人だけは今のうちに北の町へ送ってな、
 おいらたちゃ団結して海賊と戦うのよ」

「…ほう」

「おいらだってな、こう見えて若い頃にゃ海賊とやりあったもんさへへ」

それが酒の上のホラ話かどうかは、ドーラの関心事ではなかった。
言うとおり、ここが略奪されるとしたら自分はどうするだろうか。


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同時期、別の海域にて。

強力な海戦装備を備えた自警団が組織されていた。
メンバーにはブルジョアの子息、難民、海賊崩れ…なんでもいた。
彼らを纏める人物こそ、かの大男ロフティーだった。
彼には産まれ持ってのカリスマ性があった。
彼は大船団を組んで各地の海賊を一掃して廻った。
その噂はギルドメンバー上層部の耳にも入り、
やがて「謎の人物」として神格化されていく。






---ここで方舟の産まれたいきさつを話そう。

この星が生物兵器によって不毛の世界と化した後、
物流はほとんど海運に頼っていた。
しかし度重なる地殻変動によって、あまたの海底火山、暗礁が生まれた。
そうなると複雑なルートを辿らなければ、航海は出来ない。
よって途中途中に補給基地のような物が必要になる。
方舟は海原に浮かぶ倉庫兼宿のような存在。
水、食料、燃料その他を提供する。
始めの頃はめいめいバラバラにやっていた方舟だが、
しだいにギルドを組み政治的発言力を強めていった。

昨今盛んに行われているビーコン設置は、
ギルドの存在意義を根底から覆しかねない。
ギルドのタカ派は、密かに海賊を雇い妨害工作を働いている。
ドーラの母船もきっとその被害に遭ったのだろう。
穏健派は、燃料省の御曹司をロビイストとして送り出している。
問題はこじれそうだ。




つづく


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