│←白猫と,あともう一匹/陽性反応… →│
飼い猫のしおが,三日,あたしが帰宅した時点でおかしくなった。 狂ってしまった。 つまり,発情してしまったという事だ。あたしはその異変が何のサインなのか 知る由もなかった。 その日から,しおは,夜中じゅう吼え続け,鳴きつづけている。 夜も眠らせてくれない。ちょうど一年前に,高校を卒業したばかりである。
お風呂に入って大きなため息が一つ。
言葉にできない気持ちが体の奥のほうから流れ出て, 湯気と一緒にふわふわとどこかへ消えた。 泣くもんかと思った後で,二つめの大きなため息が溢れ出た。 多くは望んでいなかった。ちっぽけな幸せが一つほしかっただけなのに。 何かが静かな音をたてて崩れた気がした。どうか,気のせいでありますように。
あたしは嬉しいよ。 睡眠薬を飲めない体になったって,手首を切る事を許されなくたって, 吐く事だって, 制限されてもきっと,あたしは,嬉しい。 幸せ者なんです。
こんな幸せ者に,迷う事など許されない。あたしは強く生きなきゃならない。§2004年03月05日(金)§ |