Juliet's Diary
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2007年02月22日(木) |
富士山のない静岡での夫婦喧嘩 |
「ねぇ。じゅりちゃん、ヒマ?」
そう静岡営業所長が言ったのは、1月下旬。 営業・事務・センター長の3名しかいない拠点で、 (正確にはセンター作業員がその下に5名ほどいるが別会社) 事務員さんが2月下旬に新婚旅行で10日ほど不在になってしまう。 前々から話は聞いていたので、必要な時はお声かけちょ、 と言っていたのが、ヒマかどうかの問い合わせとは、いい度胸だな。
そうは言っても、静岡営業所長は、じゅりちゃん営業部時代の担当営業で、 とてもお世話になった人でもあるし、ここはがんばるぞ、と、 前半は名古屋地区が援助し、後半2日のみだが、応援に行ってきましたよ。
しかし。
実は事態は深刻になっていた。 事務員さんの新婚旅行だけじゃなく、肝心の営業所長が入院でござんす。 そんなワケで、水曜の昼には本社を脱出し、夕方営業所入り。 本日最終援助日を迎える、名古屋センターからの助っ人モトナリさんと、 静岡センター担当の静岡ヤクザが、温かく出迎えて・・。くれなかった。
しょっぱなから大混乱の静岡営業所。
そりゃそうだろうな。なんといっても静岡ヤクザはセンター担当。 お客との電話応対も、伝票入力も、ついこの間の付け焼刃。
オマケになんだよ。この乱雑さは(怒!) 「すっげーよ、静岡。事務員さん1人じゃん。性格でるよー・・・」 たっくんが言っていたが、このことかぁっ!!
結局どこになにがあるんだか、よくわかんない状態のまま、初日終了(泣) 本日最終日のモトナリさんは、名古屋へご帰還。
「ちょっとー。もう帰るだけでしょー。夕飯でもいっしょにどーおー??」
結局、名古屋モトナリと静岡ヤクザとじゅりちゃん3人で夕飯。 東京でならありえるが、ココ静岡だよ。金輪際ありえない。 しかし、うなぎの蒲焼が有名だと聞いていたのに、 「オレ、昨日、うなぎ食った」と、モトナリが言うので(ちくしょー) ヤクザお勧めの、お刺身定食を食べに行った。 うまかった。どうやらココは海にとっても近い場所らしい。
笑顔で会食する3人。 しかしこの食事のとき、すでにその戦いの火蓋は切られた後だった。
翌日。ホテルまでセンターの2t車で迎えにくるヤクザ。 通常のじゅりちゃんの勤務は9時からだが、現地時間というか、 ヤクザの出勤時間に合わせ、8時から。ちょー眠い。 だが、ぼやぼやしている暇はなかった。
知らない客。よく知らない細かい静岡のシステム。 さらにじゅりちゃん、営業部離れて6年経つし。
「じゅりさんって、システムの操作方法を教えている人なんでしょ? じゃ、なんでもできますよね! 助かります!」
えぇ。教えてますよ。営業事務だけじゃなく、センターも請求も、 経理も資材も、ぜーんぶ、操作方法は社内イチ、わかってますよ。 ただ、実践経験がまったくナイだけで(←ダメ)
もたくそ。もたくそ。
理屈はわかってる。こういう時は、こーして、こーすれば、こーなる。 しかしだねー。やっぱり、理論と実技は別物だね。 追いつかないんだよ、スピードが。 昔は客を同時進行で10件以上捌いていたのに、 今、たった3件で、あっぷあっぷになってるし。
「もう12時??」「もう5時!!!」
ヤクザと二人で、あっぷあっぷ。 ヤクザもなれない仕事のせいで、疲れたとか感じるヒマ、ホントなし。
「よし。今から請求書を作るか」
センターのシャッターをおろし、作業員が帰った後、 ヤクザと二人で、今回の最大の使命。
「営業も事務員もいない状態で、請求書をつくる」
の、作業を始めた。
「オレも手伝います!」
いい心がけだ、ヤクザ。新しい仕事に躊躇がないのはいいことだ。 だが問題なのは、ヤクザは、この仕事をまったくやったことがない。 そして、どんな風に請求書が作られているかも、知らないことだ。
「まずはこの請求書の中で、単価が設定されていないものを探し出す」
蛍光マーカーを握らせ、請求書の束を渡す。 ホント、古いシステムだよ。 新しいシステムになったら、こんな面倒な作業とはオサラバだよ。
ヤクザは真面目に、きゅきゅと蛍光マーカーをぬりぬりしている。 よし。それが終わったら、単価入力だ!
ひとつひとつ、入力方法を説明する。 ヤクザは新人社員のように、従順に聞いている。 入力する単価は、営業作成の単価表から探し出すしかない。
「もし間違っても、後で訂正効きますよね?」
「できるわよ」と、わたしは言った。 「もし180円のモノを間違って1800円と入力しても、後で直せるわよ。 ただソレは、1800円が間違いだった、と、気がつくことができればね」
ヤクザは青くなった。 ヤツはこのコンビの恐ろしさに、やっと気がついたようだ。
そう。ヤクザと私のコンビの恐ろしさは、商品単価についての知識がない。 というより、感覚すらないのだ。 じゅりちゃんは営業部だったから、多少はあるが、この膨大な 請求書の中から、そのひとつを見抜くほどの眼力は持っていない。 ヤクザはセンター職員だから、仕入れ単価は多少知っていても、 リース単価なぞ、まったく知らないと言っていい。
当社始まって以来の、超無責任コンビは、もくもくと作業を続け、 とうとう夜8時。 やっぱり当社始まって以来、もっとも無責任な請求書が出来上がった。 二人とも、目が血走っていたし、ドキドキしていたが、 それでも「エイヤッ!」と、請求書をポストに投函した。
「ヤクザさんは、いい勉強をされましたねー。いいなぁ〜・・」
東京に帰ってから九州のダーリン。愛しの林田さんに話したら、 ヤクザと同じ職種の林田さんは、ちょっとうらやましそうだった。
ヤクザもちょっと興奮していた。 この分野では役にたたないと思っていた自分が、ちゃんと? 請求書を作れた。別の仕事も、ちゃんと?できた。
帰りの車の中で、ヤクザとふたり「イヒヒ」と笑いあった。 難関を乗り越えた二人は、同志になって、ちょっと仲良くなった。
「実はカミさんが、最近、すごい怒っているんですよ・・・」
2年前のグアム社員旅行でも聞いたような話題だが、まぁいい。
ヤクザは20歳で子供ができたので結婚。奥さんは2歳年下。 現在ヤクザは29歳。 子供ができても働かず、パチンコをして生活をしていたそうだ。 で、2人目の子供ができたので、さすがに就職を決意。 いくつかの職を経て、当社にやってきた。 (やっぱ容貌から想像していたような、過去だった・・・)
最初は作業員としての就職だったが、上司が退職し、新しく人が入ると、 そのまま場内を統括するような立場になるが、 人数が増えるに連れ、人を使う難しさが出てきた。
立ち上げからまだ数年の若い営業所は、まだノウハウが確立していない。 それらも含め、ただ作業をしていればよかった自分が、 今は人を上手に使わなければ、場内が回らなくなってきている。
上司には相談するまでもない、小さな悩みもある。愚痴もある。 だが18歳で母となった彼の奥さんは、職業経験が浅く、 夫の話に、ほとんど興味を示さないとのこと。
「もっと相談に乗ってもらいたいのに・・・」
たぶん、ただ話を聞くだけでもいいのだろうが、 子供二人の世話に負われる奥さんに、そんな余裕はないと思われる。
そして最近、その夫は、仕事で帰りが遅い。 事務員さんはいないし、所長は長期入院。 オマケに他拠点から応援が来るとなれば、夕食をお供する儀礼も、 そのまま彼の負担となる。 ソレが、奥さんの日ごろの不満に、点火した。らしい。
「昨日も家出るとき、大喧嘩です」
職場から家が近く、一度作業着から私服に着替えて食事に合流した彼は、 家を出るとき、奥さんと大喧嘩。
「どこ行くのよ!」 「食事に行くんだよ!」 「ダレと行くのよ!」 「名古屋センターの人と、本社の事務の女の子とだよ!」
女の子ー??? と思ったが、言えなかった。 わたしはあなたより5歳も年上で、社歴も倍以上長くて、 さらに役職もあなたより上なのに、女の子扱いかよ、と思ったが、 運転席で落ち込むヤクザを見て、言えなかった。
あまり話す時間はなかったから、詳細は予測するしかないが、 たぶん、ヤクザの説明不足のような気がしてならない。 だいたい、わたしのことを「女の子」というあたり、口下手だ。 せめて「ベテランの人」とか、若い人を想像させない言葉を使えないのか?
「仕事と家庭、どっちが大事なのよ!」
奥さんから怒りのメール。売り言葉に買い言葉で、 奥さんだってダンナを会社にとられたような気になっているのだろう。
人事であるが、考える。
ヤクザは「カミさんに家のこと全部してもらって申し訳なく思う」とか、 「子供がかわいくて仕方がない」と言う。 見かけによらず、子煩悩なお父さんらしい。
ヤクザにとって大事なのは、家庭のほうであろうが、 でも、その家計を支えているのは、間違いなく会社である。 朝会社に行き、夜遅くに家に帰る。1日の大半を会社で過ごす。
そしてよほどのこがない限り、会社を辞めるわけにはいかない。 やめれば、学歴もない自分を今の給料で雇ってくれる会社は、 おそらく、ない。 つまり、退職したら、いきなり家庭のピンチが訪れるわけだ。
「仕事と家庭、どっちが大事なのよ!」
たぶん、ヤクザにとって、仕事と家庭はリンクしている。 仕事がダメになれば、家庭もだめになる。 家庭がダメになれば、仕事にも集中できなくなる。
もちろん、ホントにどちらかをとらなければいけないときは、 迷わず家庭を選ぶだろうが、現時点では、まだ選べないハズだ。
奥さんへの説明が足りていない。 彼は土日、家でゴロゴロしている夫ではない(自称) 午前中は子供と遊び、午後は奥さんの買い物に付き合う。 家の掃除は、主にヤクザの担当らしい。 (会食後、じゅりちゃんがホテルでぐーぐー寝ていたころ、 ヤクザは家で、掃除をしていたらしい)
もっと説明をするべきなのだ。
今、営業所が、所長の長期入院という大きな問題を抱えていると言うこと。 急なことだったので、会社としてもまだ応急処置しか決定していないこと。 そのため、負担が急激に増えていると言うこと。
今まで作業していればよかったけど、立場が変わってきていること。 そのため、体力的な負担より、精神的な不安が大きくなっていること。
奥さんも鬼ではあるまい。 ゆっくり、きちんと説明すれば、きっとわかってくれると思う。 奥さんだって子供2人もいて、夫の収入がなくなるのは困るだろう。
当社はここ数年で、大きく変化している。 新規営業所が展開し、新しい職員が多く入っていきている。 ヤクザもその初期の一員で、センター第2世代。 それも、新規営業所でいえば、第一世代にあたる。
これは、あと10年もすれば、名古屋のモトナリさんとともに、 中部地区センターの有力な立場になれる可能性があるということだ。
それには、人を使うことができなければいけない。 人の上に立つというのは、人を使うことができなければいけない。
試練でもあるが、それこそ「学歴のないオレ」には、 とっても大きなチャンスじゃないかと、じゅりちゃんは思う。 そのためには、この難関も、必ず乗り越えなければ、評価は上がらない。
そうなりたくないなら、話は別だが、立場が上がれば、収入もあがる。 ヤクザだって、一生人の下で働くだけじゃなく、 サラリーマンではあるが、一国一城の主も面白かろう。
ヤクザだけじゃない。 九州の林田さんも江川君も、広島の小宮君も名古屋もモトナリ君も。 全員おなじ境遇。ものすっごい面白いチャンスだと思う。
人を使う難しさで悩んだりしている彼らや、 どうすれば経費を削減できるか、詳細なデータを求めだした彼ら。
面白いものを、見させてもらっているとも思う。 今ほぼ同一ラインの彼らは、あと3年でどうなるのか? 5年後には? 10年後には?
差が出てくる可能性もある。 そして見続けていれば、差が出た原因も、見えるかもしれないし、 その成長の過程も見ることができる。
がんばれ。ヤクザ。 今ここで、脱落している場合じゃない。 がんばって、奥さんを説得し、協力してもらうんだ。 もちろん、家のことは、時間が許す限り、手伝いたまえ。
行きは新幹線の中で寝てしまい、いる間は雨続き。 帰りはすでに8時を過ぎていたので、富士山のなかった静岡。 でもキミの富士山の頂上には、まだまだ遠い。 だからこそ、一緒に上る奥さんとのパートナーシップが大事なのだ。
売り言葉に買い言葉では、なにも生まれない。 その後仲直りをしたって、根本の原因を取り除かなければ、また繰り返し。
がんばれ。ヤクザ。応援してるぞ。 次に会うときまでに、事態が好転していることを、切に願う。
追伸 何食わぬ顔で、再開。いつまで続くかは、不明。
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