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2004年08月08日(日) 新撰組(その男の限界)

”山南さんなら、もっと大きなことができるのに”

その言葉に、動揺を隠せない。
いつもの冷静を装おうとしも、心の奥底の野心が、暴れだす。


彼は、自分の限界を、知っている。
そして、その自分の限界が、自分の志をかなえるまでには、
到達していないことを、知っている。

だから、彼は、人に託す。

”近藤さんには、もっと、大きなことをしてもらわないと”

本当に、大きなことをしたいのは、彼自身。
でも、それが、かなわないから、彼は、人の下で、自分を活かそうとした。


享年32歳。
彼が、自分の限界を悟ったのは、いくつの時だろうか?

あまりに、悲しい。
力あふれる、その若い肉体と、噴出すような野心。
若い男なら、ダレでも信じている、自分の輝かしい未来。
彼が、それをあきらめ、歴史の陰になることを、自らの運命としたのは、
いったい、いくつの時なのだろう?


新撰組は、予想していたよりも、大きな組織になった。
最初は、彼の力が、必要だった。
彼らは、あまりに田舎者で、世間を知らない。
だから、彼の才覚が、役に立った。

しかし、彼が目指していたものとは、違う方向に、向かい始めている。
だが、彼には、それを阻止するだけの才覚は、なかった。


いつも笑顔で。ダレにでも、好かれて。
山南さん、山南さんと、ダレからも慕われているのに、
近藤・土方の様に、彼が、心を開いて、話せる人はいない。



”どんなにつらくても大丈夫なように、わたしはバカなんです”

自分とは、あまりに違う世界。
けれども、心が安らぐ。
さまざまなことに疲れ、なにもかも、忘れたい。


三谷幸喜の考える、山南敬介。
それを、独自の手法で再現する、堺雅人。

あまりに悲しくて。


自分の限界を知る男、山南敬介。

坂本の何気ない一言が引き金に、彼は自らの命を、縮めてしまう。
だが、それは、自分の限界を知る男の、最期の挑戦のように思える。
もう一度、自分の力で、なにかを成し遂げたい。


彼の望んだものが、なんであるかは、知らない。
命を懸けて、新撰組を、正そうとしたのか?
それとも、別の何かを、みつけたのか?

山南敬介の死まで、あと2回。

堺さんも、新撰組のメンバーも。
そして、じゅりちゃんも、気合十分で、ございます。



追伸

あの堺さんの、動揺の演技!!
三谷幸喜作の、山南敬介の限界と弱点を、見事に現している。

たった一瞬なのに、忘れられない。

すごい。絶対、すごい、堺雅人。



追伸2

あっというまに、恋に滑り落ちる、山南さん。

相手は、自分とは、かけ離れた世界の女性。
山南さんのような、マジメな男なら、恋することがないような、女性。

けれども、堺さんの演技は、とても、自然だった。
男が恋に落ちる瞬間を、見事にあらわしていた。


だが、あれは、恋なのだろうか?
山南さんは、心安らぐ相手を、欲している。
その相手が女性なら、男である山南さんにとっては、恋なのだろうか?

とても、不思議。
でも、男が欲する、やすらぎ、というものを、山南さんから、感じた。
堺さんの演技は、それを、見事に、わたしに伝えてくれた。



追伸3

”オレとオマエで、殺したんだ”

土方さんの信念は、固い。

”近藤さんのためなら、なんでも、できてしまう。それが、怖いのです”

目指していることは、多分、同じなのだろうに、
今はもう、互いに、ギリギリのところでしか、つながっていない。


土方さんが、山南さんを必要としないなら、まわりくどいことはしない。
最初から、山南さんの命を、狙ったはず。

無論、自分の信念を曲げることは、決してできない。

だから、脅した。人ひとりを殺して、山南を脅す。


これは、土方歳三から、山南敬介への、挑戦状。
新見を殺し、芹沢を殺し。ふたりで手を血に染めた。
行きつくところまで、オレは行く。

そして、土方歳三は、山南敬介に、大きく手を伸ばした。

目指すものは、同じだ。
だが、オマエの方法では、目的を果たすことはできない。
だから、オレを手をとれ、と、彼なりの方法で、叫んだ。

土方歳三が、賽を投げたのだ。



そして、二人の男が、それぞれの信念に基づき、
片方が命を落とす結果となる、勝負に挑む、その直前。

山本耕司、演じる、土方歳三。
堺雅人、演じる、山南敬介。

燃えるような沈黙と、心臓をつかみ合うような睨み合い。

”オマエも、覚悟を決めて、こっちへこい”
”あなたは、そこまで、いってしまったのですか!”

修羅の道へ、強引に引きづりこもうとする、山本耕司演じる、土方歳三。
信頼する仲間が、悪魔の僕となった姿を見た、堺雅人演じる、山南敬介。


演者の威力に、殴られる。

あと2回。
このふたりに、めった刺しにされそうで、見るのが怖いくらいです。


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