箱の日記
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次の日曜日
茹でいもを持って、釣りに出かけた。 地図にはのってないが、 四、五キロ南へ歩けばたどりつく ふるい貯水池。 黒っぽい鯉たちが、腹をへらし、 いくつかの深みに集まっていて それがどこか、僕はよく知っている。 同じように、 ゆでいもが放り込まれたつぎに何が起こるか、 どの鯉もよく知っている。 どうだっていいさ。 無地の鯉を数匹釣り上げて、 ぜんぶ放すのだから。
ときどきやってくるシギが、浅瀬で つるりと、ドジョウだかなんだかをすくい、 呑み込む。 目を細め、うっとりと 空を見上げている。 とりえのない僕の釣りをよそに 雲は流れていく。順調に。 鯉はどうだろう、 僕が持ってくる茹でいものほかに、 なんかほしいものがあるだろうか。
夕方、 釣り竿を片づけて、残ったえさをきれいさっぱり 投げ込む。池のまんなかを狙って。 さあ、これでぜんぶ。 次の日曜日まで。 ちょっと足りない気がするのだけれど、 それが何か、 僕にはまだわからないんだ。
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