箱の日記
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コザ鳥
このあたりの鳶は 羽がささくれ それが 潮風に古ぼけて傷んでいるようにみえるから 河をまたぐ赤橋 その高い欄干や信号機にとまっているばかりの彼らに コザ鳥と名付けた 鋭い飛行はとうのむかし影を潜め 誰もが忘れた ゆるい海面から飛び出す 動きの鈍いボラ ふらふらと倒れるように落ちるそれを さかなと知らない ゆらゆら 漁船が連れかえった おこぼれのすじをつたい、拾い上げる なんとか一日の取り分を胃に収めたく カモメの類と競い合い ようやく落ち着いて 川沿いの風が山側から降りてくれば 隙間だらけの羽をばさり 居眠りでもしそうな具合で ゆるりんと飛行をはじめる ばさり、ばっさり 下を急いで通過するトラックの行く先を 見ている 決して追わない
ボラといえば ひとの生活でつもる 澱みの中に群れをなし 身をこすり合い やがて忘れていたのを思い出したように 跳ね上がる 繰り返し、繰り返し河口を跳ね 渡る その上空 コザ鳥が夕刻の陽を浴びながら 手入れでやっときれいになった羽根をひらき ばっさり、ばさりと 風を切っている いつまでも
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