コハルビヨリ
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帰っちゃった。しょぼん。
彼と離れる日はいつも朝からうまく笑えない。 最後は笑って離れたいのに。
駅まで見送りに行って、別れ際、彼に何度も 「じゃあね」を言わせてしまった。
「じゃあね」
……。
「バイバイって言ってよ」
やだ。
「じゃあね」
やだ。
だってやだもん。離れたくない。さみしい。側にいて。 でもあんな困った顔されちゃったら。
バイバイ。
なんとか手を離して彼は改札へ。 何度も振り返って手を振ってくれた。
電車の席を取って、ホームから電話してくれた。 『浮気すんなよ。はやく卒業してこっち来い。』
さっきまで隣にいた声はまたしばらく電話からしか聞こえない。
バイバイ。 またね。
君の小さな嘘は私を想ってのことなのだろうか。
隠すのは都合が悪いからじゃないの?
すべてを知りたいと思うのはわがまま? 知らないほうがいいことなんてしなきゃいいのに。
ほんとに君を信じていたらこんなこと思わないのかな。
一度押し込めてしまえば、君に言わなければ良かった。 知らないふりしちゃえば良かった。
不安なのはきっと君も同じなのに。
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