子供の頃、両親は渋谷で料理屋をやっていたので お手伝いのおばあさんがいた。 そのおばあさんは、料理が苦手で、 お店をやっているので、食べるのに 事欠かないかと言ったら、とんでもなくて 育ち盛りの私たちは、 何とも悲惨な食生活を送っていた。 そんな中、 中学二年の時、デ・スーナーズのファンクラブを始めて メンバーの人達と食事に行く機会がよくあった。 彼らの事務所が麻布の狸穴にあったのと 活動するディスコやクラブが六本木近辺だったこともあり 麻布近辺で食事することが多かった。 お箸で食べる高級ハンバーグステーキを食べたのも、 甘酸っぱくない冷やし中華を食べたのも、その頃だった。 その中で、ずっと不思議な食べ物として記憶に残っていたのが ニコラスのピザだった。 その後どこのお店で見るピザも 皆、具がたくさん乗っていてトマトソースがたっぷりかかっている。 わたしが食べたものとは全然違うのだ。 あれ以来40年近く経つけど、 ニコラスへは行っていないし、 もちろんピザだというのは分ってはいる。 でも、同じものに出会わないので なんだか、納得いかなくて ずっとずっと、あれはなんだったのかなーと引っ掛かっていた。 そしたら、さっき萩原流行という役者さんが 一日に何を食べるかという番組に出ていて、 ニコラス歴42年といって、ピザを頬張っていた。 「おおーー、、あのピザだーー!」 心の中で叫んでしまった。 わたしが食べたのは、もっと焼きが甘くて 周りも画面のピザほどには焦げていなかった。 チーズももう少し多くてもったりしたものだった。 そして大きさも何人前なのか もっともっと大きな直径3、40センチくらいだった。 でも、まさに、あの不思議なピザがそこにあった。 あの、チーズだけがたっぷりと乗った コクのある不思議な食べ物。 ニコラスのピザ!
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