カンラン 覧|←過|未→ |
時間に追われずゆっくりした歩調で気の向くままにあっちへこっちへ。 なんてしあわせなんだろう。 太陽の下を歩いてたいのにやむなく潜る大きな道路の下に掘られた地下道。 薄いピンクのタイルが貼られた壁沿いに 自転車がびゅんびゅん,人がつかつかと みんながみんな私を追い抜かしていく。 「ゆっくり,ゆっくり。」 そうは思いながらもたった一人きりになったほんの少しの瞬間は 背筋が少しすくっとなって歩みはこころもち速まる。 まぶしい地上に出るのが一層待ち遠しくなる気持ち。 スロープに挟まれた階段を上がって広場へ入る途中の道路にずらり連なる自動車たちは テグスを通してネックレスにしてしまいたいぐらいに白ばっかり。 そんじょそこらのマダムの首もとで艶めく真珠の首飾りよりうんと高級でうんとレアなアイテム。 パンジィの咲く花壇とお城を浮かべたお堀のそばで見上げた青い空は 私の視野の端っこに原毛を貼り付けたような模様を抱えてる。 ---あぁそういえばその後あの手袋の羊毛たちはきちんとはり付いてるだろうか。--- そうそうゆっくりはしていられないかも。 立ち止まった場所には傷ついたユウカリの下に赤と白のストライプの乳母車。 ユウカリも生きてて 赤ちゃんは生まれたばかりで 私はと言えば劣らないぐらいにまだまだで 今は不安をただただ抱えている状態。 これから先どうなるかなんて誰もわかりやしない。 来るものは来る,来ないものは来ない。 まだまだ雲は遠いぞ。 それにたとえ覆われたとしてもじき流れ去る。 今を飛び越して前には進めない。 まずは疑心暗鬼を拭い去ることが私のふりだしだ。
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