カンラン 覧|←過|未→ |
ふと視線の隅っこにぞろぞろぞろぞろ動くものが映りこみ, 顔を上げてみると思い思いの洋服を着た子たちが ホテルから続々と出てくるところだった。 あんまり突然であんまり大勢だったのでびっくりした。 中学生か高校生の修学旅行か何かなんだろう。 私はほんとにそこら辺近辺の年齢当てには才能がない。 手品の万国旗のように次から次へと出てくるので, なんとなぁく眺めているとたくさんの目線が返ってきた。 たしかにむこうからしてみれば 「こんな時間にこの人ここで一体何してるんだろう?」 てなところかも知れない。 けど私の毎朝の日課なので仕方がない。 きっとこれから平和公園を見学するんだろう。 それにしても結構いいホテルに泊まるんだなぁと変なところにも感心。 そういえば私の高校時代の 昔っからぼんやりと憧れていた南の島への第一歩。 きれいな琉球ガラスに閉じ込められた泡盛を楽しむことなど もちろんできるはずもなく, ただひたすらに戦争の傷跡をたどる旅だった。 夕食前のほんのひととき, グレイの空の下に揺れるグレイの水面を見るべくダッシュしたのを覚えてる。 想像してた海とはほど遠かった。 わさわさと風にあおられ揺れる草木を縫うように 舗装された道路を 大きなバスに乗って移動した時間が意外と一番印象に残っている。 それがあの空気を好きになった瞬間だったような気がする。 その後何度か訪れることになる足がかりになったのは間違いない。 あれからもう8年以上の月日が流れたことに素直な驚いてから 先ほどの子たちの後ろ姿を目で追ってみる。 小さく小さくなっていくのではなく, ふっとまるで何もなかったかのように物陰に消えてなくなった。 日々ふつふつと生まれ出るあんなことやこんなことも おんなじように生まれては消え生まれては消える。 それはさみしいようでもあるけれど,ありがたいことでもあるんだ。
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