カンラン 覧|←過|未→ |
チャン・イーモウ監督の『菊豆』。 後継ぎを産むという目的だけのために お金で買われてきた若くてきれいな菊豆と 暴力亭主・金山が甥っことして育ててきた天青が 愛し合ったことからはじまる あまりにも残酷で悲しい物語。 全体に漂う暗いトーンの中で 中庭にひらひらと舞う 赤や黄色,若草色の織物だけが まぶしいぐらいに色鮮やか。 愛も憎悪も無邪気さゆえの残酷さもいっしょくたに混ざり合う。 愛し合ったふたりの間に生まれてきたこどもだけは すくすくとしあわせに育つものだと こころのどこかで信じたいという気持ちは 笑わない,喋らない 天白の姿を目のあたりにすることによって裏切られる。 ちいさな天白が唯一声高らかに笑うシーンでは, こどもという生き物に初めて不気味さを感じて鳥肌がたった。 **************************************** 不快と感じる隙も与えられることなく はじめからおわりまで画面に見入ってしまいました。 人間てやっぱりきれいなものじゃない。 平気で人を傷つける考えや きたないものをたくさん抱え込んでる。 だからこそ強さも優しさも兼ね備えているんじゃないかと。 きたないだけのきたなさ, やさしいだけのやさしさなんて存在しない。 この人のつくった作品を観ているとそんなことを感じます。 「あなたは感受性が強すぎるところがあります。」と危惧されて, アンテナを折りたたむ練習をしていたこと。 折りたたまなきゃよかった,なんて後悔しています。 一度流したものは戻ってこないのだから。 受信しなかったものや 受信しても外へと飛ばすことができずにお腹の中で腐敗していった思いが 今の私をつくっているのも事実だけど。
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