早瀬の呟き日記

2002年10月04日(金) 「楢山節考」

映画ではなくて原作の小説を遅まきながら読みました。昭和文学史の鬼っ子と名高い深沢七郎(新潮社文庫)です。
「中央公論新人賞」の選考委員だった三島由紀夫が、「怖くて眠れなかった」と評した、問題作。
山村の姥捨ての話なんですが、こりゃー怖いよ。そら怖いわ。
三島という人は何だかんだ言って育ちのいい、真面目な人ですからねえ。がっちがちの理性人間が昂じて腹かっさばいちゃった人ですからねえ。この世界は怖いだろう。
7行目で「嫁は去年谷底に転げ落ちて死んだ」とかあっさり書いてあるし、年寄りになっても歯が丈夫なのは村の人から嘲笑されるからってんで、主人公のばーちゃんは自分から石で歯を折るし(ぶるぶる)、家族十二人が姿を消した家のことを村中で申し合わせて口にしなくなったりするし、今じゃあり得ないっすよ。あり得ない。少なくとも早瀬は、「Return To 美しき昔の日本」とかなって、こんな農村生活に逆戻りとかなったら、生きてけません。無理。絶対無理。あーおいら現代都市人でホントによかったよ。
アンチ・ヒューマニストいうより、ヒューマニズムという観念がすっぽり抜け落ちてるんですわこの深沢七郎という人は。情がないって訳じゃないんだけど、それに「思いやり」とか「倫理観」とかの「こうしなくてはいけない」っていう枠がないんだよね。ある意味自然体で爽快ですけど(コラ)。
まあ、うちのじーさんも実は深沢七郎と同じ県の出身で、ヒューマニズムのなさには共通するものを感じますけどね(笑) いや、原則的に気は良いんですよ。お人好しと、ある意味では言えなくもないんですが、どーにもね(笑) 例えば、「差別はいけません」という観念がすっぽり抜け落ちてる。嫌なものは嫌、と言って憚らないんですから(笑) こういう人を見ていると、「いい人」「悪い人」という区別の無意味さを感じます(笑)
ま、それはどうでもいいんですけど、1950年代にこれだけ突き抜けた感性を持った作家がいたというのは、奇跡的なことだと思います。うーんすげえなあ。


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琳 [MAIL]