また帰って来たロンドン日記
(めいぐわんしー台湾日記)

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2004年05月24日(月) 【ほん】 田口ランディ「コンセント」

 この本、うちの相棒が日本から送ってくれた本の中の一冊。昨日の夜、何となく読み始めてしまった。

 感想はけっこう面白い。俺は基本的に「夢判断」に興味がないので、そこはすっ飛ばしてしまったが、なかなかおもしろかった。最後に解説をかいているひとの言葉を借りれば、「あっち側とこっち側を行き来する」感覚なのであろうか。

 彼女の言を借りるまでもなく、今の社会において「あっち側とこっち側を行き来する」事はそんなに珍しくないのではないか。最近俺の気になっている「引きこもり」にも通じるコンセプトかも知れない。

 「コンセント」の中に表現されている主人公の、一見よく社会に適応している様子、その反面にある存在や境界のあいまいさ、不安定さ、そして社会に対する態度(特に葬儀屋や清掃会社のプロフェッショナルな仕事に対する態度。人々は往々にしてこういう「優しさ」を求めるのだろう)、そして確信と強い意思(コミットメント)、そういう要素が細かくちりばめられて、ぱらぱらと静かに降ってくる描写がここちよく、少し安心もする。

 夢判断とあまり要領を得ないカウンセリングには苛々させられるが、ま、これも一時代前のカウンセリングや、いわゆる「精神分析」の残滓を表現したものだろうと理解する。また精神病として「処置入院」させられ、最終的に自殺してしまう女性の描写も、ひとむかし前の精神医療の状態を反映させ、また同時に現在においても同じなのであるという信じがたい事実を、暗に突きつけているようにも思える。

 ともかく、上に書いた苛々させられる二点を除き、最後まで違和感なく読めた。最終的には、自分の考えにとってもいろいろ刺激になる本だったと思う。


倉田三平 |MAILHomePage

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