夕方、みのりと二人でスーパーに買い物に行った。
駐車場に車をとめて、助手席のみのりを降ろしにまわり、ふと隣の車に目をやると、中で女の子がこちらを向いて泣いているではないかっ!
サーっと血の気がひく私。
とっさに車のドアロックに目がいく。 でも四つともしっかりと閉まっている。
年はみのりと同じくらいか・・・?
運転席から窓の外を覗き、一人ぼっちにされた悲しみに打ちひしがれているのが見てすぐわかる。
車から降ろされたみのりも、隣の車の女の子に気付いたらしく、
「どったの?」 と私に聞く。
返答に困って、 「かわいそうね・・・」 とだけ答える私。
(どうしよう、どうしよう・・・。)
(どうしたらいい・・・?)
このままこの子をほっとく訳にもいかないし、カギはかかってるし・・・これはやっぱりお店の人に連絡して保護者を呼ぶしかないか・・・!
そう決心した瞬間、すっと母親らしき人が車に向かって歩いてきた。
私の前を通り過ぎ運転席に入ろうとしている。
目が合った。
「かわいそう!!」
という言葉が思わず口から飛び出した。
しかしその女はそんな私の言葉を聞いたか聞かずか、なにくわぬ顔で車のカギを開け、泣いている女の子に気付いても「ごめんね」の「ご」も無く、それどころか運転席のその子に、
「ほら、あっちいって!」 とだけ言って車に乗り込んだ。
何!? 何なの?あれは!!
どうして女の子が一人で車に残されていたのか?
考えられるのは、眠っていたからそのまま置いて一人で買い物に行ったか、子供が自分で「待ってる」と言ったから置いていったけどやっぱりいざ置いてかれたら悲しくなっちゃったか。
でも、このいずれかなら母親が車に戻った時点でもっと謝ってもいいはず。
あの感じだと、
その子が何か母親にとって面白くないことをしたので、「お仕置きとして」車で一人で待つことを命じた
というのが一番考えられる筋かもしれない。
信じられない
信じられない。
あんな小さい子を一人で車の中に残して行ってしまうなんて。
私はすっごく嫌な気分で、買い物してる間中心の中がモヤモヤ。
なんだかうわのそらで帰って行った。
アメリカだったら逮捕されてる。
あんな母親逮捕されちゃえばいいんだ。
自分の子供に熱湯をかけて殺しても、少しも悪びれることも無く、むしろ自己弁護にのみ全神経を集中させ、整形手術までしたあの女と、今日の女がかぶって見えた。
泣きじゃくるみのりを見た瞬間、心臓がバクバクして、体中の血管がカーっと熱くなったような気がした。
自分のしたことの酷さに気付き、謝って謝って謝りぬいた。
だけど泣き入っているみのりは少しも収まることなく、しばらく泣きつづけた。
それ以来、とてもじゃないけどそんなことはできなくなった。
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