Dance日記帳
モクジキノウヨクジツ


2003年09月06日(土) 虹の橋

リハーサルが終わり、心なしか早めに自宅に戻れた。
レッスン中、リハーサル中、携帯を放置したままだったので、自宅に戻ってチェックしたら、驚くほど何度もステファニーから着信が。
しかも留守電に「メッセージ聞いたら電話して!」って入ってるの。
しかし時差を考えたら、NYは朝早い。しかも週末。
寝る前くらいに電話すればちょうど良いくらいの時間帯になるかな?などと思ってた。

そこへ、すかさず国際電話が着信。
ステファニーだな!と電話に出てみると、なんやら様子がおかしい。電話口で泣いているみたい。
「どうしたのよ!なに?ステファニーでしょ?いったいどうしたのよ?なんだーっつーの??」
「・・・だの。うっうっ・・・。」
「あ?なに?ごめん。聞こえないよ。なに?どうしたの?」
「死んだの。死んじゃったの。King-king(犬の名前)が昨日・・・」
「・・・」

何も。一言も発することができなかった私。
ただ、「No!!」と言っただけで、何も言えなかった。
ポロポロと涙がこぼれ落ち、声が出ない。
今も、涙がとまらない。

King-Kingはポメラニアンの男の子。11歳。うちのクッキーより2歳若い。まだまだやんちゃで、先日ステファニーが来日した時も、自宅で撮影した動画をデジカメで見せてもらったばかり。
そして、一緒にお台場や、アウトレットにショッピング行った時には、King-Kingに似合う、ペット用の可愛いTシャツやパーカーなどをうんと買い込んで、「NY戻ったら、これ着せて写真撮って送るからねー!」などと喜んでいたのだ。
うちのクッキーの怪我の話などをして、「お互いに年老いたパートナーを大切にしなきゃならないね!」と言い合っていたところだったのに。
ただ、ただ、本当に信じられない。
愛するペットとの別れというのは、こうもあっけなくやってくるものなのだろうか。
だとしたら、たぶん、私は到底耐えられない。

「どうして家の犬なの?なんで?そんなこと、私受け入れられない。絶対に嫌だ。お願い、うちの犬を返して。ねえ、どうしたらうちの犬が戻ってくるの?教えてよ。教えて。こんなの、絶対フェアじゃない。私、全然理解できない。ダメなのよ。お願い、助けて。どうしていいのかわからない。助けて。」
電話口で、泣き叫んでいる親友を、私は何と言って慰めたらいいのか、全然わからなかった。
ただ、ただ彼女の訴えを聞きながら、号泣するしかなかった。
「助けたいよ。私ができることだったら、親友のあなたのためにできることなら、何でもするよ。助ける。でも、どうしたら、犬が戻ってきてくれるのか、私も知らない。ごめん。本当にごめん。」

King-Kingは、彼女たち家族が住むアパートの2階の窓から転落し、亡くなった。ほぼ即死状態だったらしい。
しかし、仕事先にいた彼女が後から病院に到着するまで、亡骸の眼は見開いたままで、彼女が泣きながら抱き上げたとき、ようやく眼が閉じて、永眠についた。

ステファニーが来日している時、彼女を連れて、高速にのってアウトレットモールまで遊びに行った。
その途中。高速道路を私の運転で走っていると、前方の車が突然急ブレーキをふみ、妙な蛇行運転をした。
何事だろう?と慌てると、なんと、高速道路に犬が迷いこんでいたのだった。
「あれ?僕、どうしたらいいのかなー?」と、いかにも呑気そうに高速道路をパタパタと横切る犬。
危うく私も撥ねそうになって、前の車と同様に慌ててブレーキを踏んで、犬を避けた。
私も、ステファニーも死ぬほど驚いた。
「なんてことなの!誰か助けてやってよー!!」とバックミラーをみながら二人で叫んでいた。

電話口のステファニーは、さんざん泣きじゃくったあと、少し冷静になってきた。
「ごめん。私、誰かに聞いて欲しかったの。でも、よく考えたら、こういうキモチを本当にわかってくれるのはあなたしかいなかったの。どんなに私が傷付いて、どれほど苦しんでいるのか、詳しく説明しなくても、あなたなら、絶対わかってくれるって思ったから。ごめんなさい。家族の前じゃ、泣けないの。お母さんも、お姉ちゃんも、弟も、そして小さい甥もみんな昨日から一晩中泣いているの。私だけでもしっかりしてないとダメになっちゃうから。だから、みんなの前ではがんばってるの、泣かないように。でもね、でも、辛くて、どうしようもなくて、真っ先にあなたのことが浮かんで、迷惑だってわかっているけど、どうしても聞いてもらいたかったの。」

何故か昨日、夜寝る前にネットサーフィンをしていて、妙なサイトに行き着いた。
それは[http://www.rosepet.com/kt/txt/nizinohasi.htm]で、「虹の橋」というページだった。
興味のある人は読んで欲しい。
このあらすじをステファニーに話した。
上手には伝えられなかった。
もし、誰か英語の得意な人がいたら、このページの、このお話を英語に訳してくれたら嬉しい。

これは、もしかしたら、虫の知らせだったのかもしれない。

彼女が親友の私を「痛みを分かち合うことのできる人」として選んでくれたことを嬉しく思う。
そして、彼女の空虚を考えると、私の胸は張り裂けそうである。
受話器を持つ、私の左手は、小刻みに震えていた。
受話器にあたるピアスの音で気付いた。
彼女の痛みや苦しみを、身近に感じるからこそ、何もしてあげられない無力さに腹立ちさえも感じる。
もし、留学時代のように近くに住んでいたのなら、すぐに今から彼女の側へと飛んで行くこともできたのに。

「限られた時間なのよ。だから、あなたも、愛犬との時間をムダにしないで。一刻一刻を、愛犬との大切な時間にして。決して、その時が訪れても、私のように後悔したりしないように・・・」

受話器を置いて。
足下にいたクッキーを抱き上げて、存在を確かめるかのように抱きしめた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私の顔を、いとおしそうに、なめてくれた。
その、舌の暖かさに、余計に涙がとまらなくなっていた。
犬は何もかもお見通しなのかもしれない。

涙はどうしてこんなにも出るのだろう。
私の中に、こんなにも水分があったなんて驚くくらい。
泣いても泣いても、まだ出るんだよ。

彼女の愛犬が、安らかなることを。
そして、親友ステファニーが一日も早く、この痛みと苦しみから解放されますように・・・。


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