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なぜ 私はここにいるのか・・・ でも ここが何処なのかはよく分かっている そう 娘の部屋 ドラえもんの どこでもドアがあったわけでもないのに なぜか私は今 娘の部屋にいる まるで 泥棒に入ったみたいに心臓が大きく高鳴り この部屋の特徴を見逃すまいと必死になっている 見覚えのあるものはほとんどないけれど 懐かしい娘の体臭がかすかにして この部屋が娘の部屋であることは間違いない 娘は少女趣味ではなかったはずなのに なぜかかわいい小物であふれていた そのくせ ふとんカバーだけは薄いダークブルーの渋い色あいのものだ 冷蔵庫の中には こまめに料理をしているらしく ラップのかかった皿や小さい野菜の切れ端があった でも 早くこの部屋を出て行かなければ・・・ どうしてこの部屋に入ったのか分からないし、鍵も持っていない とりあえず白いドアを開けて外に出たら まるで どこかのブチィックのような感じで 白いペンキを塗った椅子があり アートフラワーが飾られている 場違いのところにいるとまどいを感じていたら・・・・
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目覚ましが現実に引き戻した 私の願望がけったいな夢になった
私が日常的に感じている寂しさをきっと、きっと娘も感じていると思う でも あの子はそんな感情には気が付かないふりをして なにくそ!という気持ちや 親を恨む気持ちに置き換えていると思う・・・ 中里恒子著「中納言秀家夫人の生涯」という本を思い出している 戦国時代 宇喜多秀家夫人で前田利家の娘だった豪姫 15歳で結婚して 33歳のとき八丈島に流刑になった夫と 生涯生き別れのまま 61歳で歿している その豪姫の臨終の折の心残りを慰めるため 前田家が代々、八丈島へ米、衣類、金子を送り続けた それは明治の恩赦まで続けられた 私は自分の身に置き換えて それこそ20年先か、30年先か 「最後にもう一度 娘の顔がみたい!」と 死ねずにいる 頭がおかしいと言われそうな たとえようもない話だから 誰にも話せないが それくらいの覚悟が娘にあるように思えてならない
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