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「 お風呂場 」
2003年04月16日(水)


  吐き捨てた唾は、鋭い放物線を描いてピンクのタイルに漂着(ひょうちゃく)した。
 中心には、ペールトーンの緑色の痰(たん)があるから広がらなかったのだろう。

 「げっ」
 という声を出すやいなや、同色相の手酌(てじゃく)を探した。
 少し遠い。
 体を湯船から出さないと取れない。けっこう遠い。


 「ピュゥゥ」
 今度は、風呂場のお湯で水鉄砲ならぬ、口でのお湯鉄砲。
 「あれ、したすぎるな」
 「ピュゥ」
 「ぅ、量が少ない。えっと・・・」
 「ピュゥゥウウウウウ」
 「おお、緑の的が揺れ出した。ちょっと下がったぞ。おっしゃ!!」
 「ピュゥゥウウ」
 「いいね〜。いいよ〜〜ん♪」
 「ピッゥゥゥゥゥゥウウウウ」
 「あちゃ、右過ぎた。」
 「ブブゥゥゥウウウウウウウウウ・・・」
 「力みすぎ〜。拡散してしまった。」
 「ピュゥゥウウ」
 「大当たり〜〜〜〜〜♪」
 汚いと思っていた緑は何時の間にか好奇の対象になったので、栓に流れて行った時は少しガッカリした。

 目を移すと外は夕焼けの兆(きざ)しが見えてきている。 
 さて、催(もよお)してきたし、便所行って街にでも出ようかな。

執筆者:藤崎 道雪



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