| 2016年06月08日(水) |
永い言い訳 西川美和 |
  西川美和 文藝春秋 2015
STORY: 作家の津村啓は妻の夏子を突然事故で亡くす。妻の親友も亡くなり、残された夫と子供2人と一緒に過ごすことになるが…。
感想: 作家の津村啓(本名・衣笠幸夫)は、妻・夏子との関係は冷え切っており、会話もろくになかった。愛人と性行為をしている最中に親友と旅行に出かけた夏子が事故で死亡したことを知る。
有名人なだけに報道関係者からも注目される中、悲しみも湧いてこない自分に当惑しながらも日々を過ごしていた。
そんな時、遺族会に参加することになり、そこで夏子の親友の残された家族・大宮一家と出会う。
向こうは夏子とも交流があり、作家・津村啓のことも本名で呼ぶ。最初は付き合うつもりもなかった幸夫だが、陽一がトラック運転手であり、小学生の息子が保育園の妹を送り迎えするために、中学受験の塾を諦めざるを得ないことを知る。
子供たちのことを不憫に思った幸夫は、自分が塾のある日に子供たちの面倒を見ることを申し出て、次第に変わっていく。
もともとの幸夫は子供はリスキーなものと考え、妻も同じ考えであると信じて、子供は持たなかった。
しかし、子供たちと交流するうちに自分に欠けていたものが少しずつ見えてくる。
最後の方で、陽一一家と仲たがいしてしまった下りのところでは、幸夫ならやりそうなことだなと思いつつも、家族の中に深く入り込んでいたため、その後の一家が悲しいことになり、何とか和解してもらいたいものだと思って、じりじりした。
結局、妻は死んでしまって幸夫のことを実際のところどう思っていたのかがわからない。
しかし、妻の水に濡れて壊れた携帯が最後に残したメールはもうひとかけらも愛してないという残酷な一文で…。
このメールは送信されていないし、実際のところ幸夫のことを書いていたのかもわからないわけだけれど…。
しかし、愛がなかったとしても、突然相手にいなくなられるということがどういうことなのか…。
そんなことを考えさせられてしまった。
もちろん陽一一家は愛すべき妻と母を失い路頭に迷っているわけで…。
事故に限らず災害などである日突然命を絶たれることの残酷さを痛感した。
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