感想メモ

2004年11月11日(木) 負け犬の遠吠え  酒井順子


酒井順子 講談社 2003

 かなり話題になっていた本。私自身はこれが発行された頃はまだ「負け犬」だった。今はこの本で言うところの「勝ち犬」になっている。勝ち負けをどうこうという本ではないのだと思う。それにどういう状態が勝っているのか負けているのかは本人の気持ち次第だ。

 最初の方を読んだときに、かなり共感できなかった。というのは、自分自身がいわゆる「もてない系負け犬」であったからかと思う。この本だと「負け犬」の中にもレベルがあるというか、結局同じ「負け犬」でも恋愛経験豊富で一人でがんばって生きている人に向けての本という感じが濃厚だから。私の場合はいわゆる「パラサイトシングル」と言われるやつだった。でも、別にパラサイトしていたわけじゃなく、ただ単に結婚相手がいなかったから結婚せず自宅にいただけかな。通勤可能な場所だから一人暮らしとかも考えなかったし。傍目から見たらよい暮らしに映るのかもしれないけれど、家族と同居するということはある程度の軋轢などもあるし、相手がいたらさっさと結婚して家を出て行きたいと思っていた。(実際そうなった・・・)

 この本を読んですごくぞっとしたのは、少子化と高齢化による家族の平均年齢の上昇ということ。その場合、新しい行事も話題もなく、食事に行っても弾んだような感じがなく・・・というようなくだりには恐ろしいものを感じた。私も子供はいないけれど、確かに今後そのようになっていく可能性は秘めている。子供がいれば色々な行事が年齢とともにあって、それにより華やかな話題もあるのだろうが、年をとればそんなものは全くなく、逆に暗い話題ばかりということになりかねない。

 このところ結婚に関する色々な本を読んでいると、このまま結婚しない人も増えるだろうし、結婚したとしても子供を生まない人も増えるだろうと思う。それは決して日本の国のシステムのせいだけではない。結局今の人はみんな、自分が苦しいことはできるだけ避けたいと思っている。だから、結婚をする前、というよりは、すでに付き合う前の段階でも値踏みをしてしまうのかも。それはもう色々な条件があると思うけれど、顔の好みだとか年収だとか色々。結局そんなことを言い出すと完璧な相手などいるわけがないし、若いうちならいっぱい対象となる人もいるのではあるけれど、「負け犬」ともなると、周りの男もいい人はすでに結婚しているし、出会い自体も少なくなるからそんな贅沢言っていては絶対に結婚はできないだろう。でも、今は女性にも経済力がある程度あるし、働いていれば一人で食べていくことくらいは可能なので、あえてレベルを落として結婚しようとは思わない。

 それと子供については、私もそうだけれど、二人の生活が豊かであれば、あえて子供を生んで大変そうな生活を選ばなくてもいいかなーという思いがなきにしもあらず。でも、老後のこととか考えたりすると一人くらいはいてもいいかなとかそういうことも考える。しかし、子供にはお金がかかる。収入が今のままだとすると自分のために割けるお金の量も必然的に減ることになる。そうなると、今の生活レベルを落とさざるを得ない。育児には休みはない。生んだら最後、ずーっと子育てが続く。自分もそうしてもらったというのにやっぱり面倒かなーという気持ちも湧き上がる。子供を育てる覚悟みたいなものができない限り、産もうという風に心から思えない。結局自分がかわいい人が増えてるってことだろう。

 でも、やっぱり結婚して「勝ち犬」になると、気持ちはすごく楽だ。結局独身で一人で突っ張って生きていくのはすごく疲れる。だったら、いい人がいるならそういう人と一緒になって二人で生きていく方が楽だ。ただそのいい人を見つけるのが大変だし、見つからない人が多いから結婚しない人が増えているということだろう。それが負けているかどうかはわからないけど、未婚だったころの自分から見ても40歳くらいをすぎて一人で生きている人はやっぱりさびしいのだろうかとか思ったものだ。今はあまりにもみんな晩婚なので、30代に入ってもまだ余裕があると思うけれど、昔は30歳すぎたらこういう気分になったものだろう。結局こういう気分に自分がなるかどうかも大事な要素で、こういう風に思う人だと結婚に対して真剣に考えるし、自分から行動を起こそうと思うものだが、最近は35歳すぎても結婚しない人も多いし、周りの目も昔よりはゆるくなってる。だから、結婚しなくてもお仲間が多いからいいやと思って自分を安心させることもできるだろう。それでも、結婚してればとりあえずひとつのファクターを満たしたというような安堵感はあるかなーという気がする。周りからうるさく言われなくてすむし。

 やっぱりいつかは結婚したいと思っているなら、絶対に若いうちの方がいいかなと思う。選択肢も多いし。周りを見ていても30歳をすぎると苦戦すると思うし。でも、そういう風に無理して相手を見つけなくてもいいやって思っている人がいっぱいいるから、これからも「負け犬」は増えていくだろう。「負け犬」だらけになれば、ますます負け犬でも大丈夫ということになって、未婚の人が増えるんじゃないかな。

 この作品、今度、久本雅美を主演にドラマだったか映画化されるらしいのだけれど、どうなのかな。


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