2004年08月18日(水) |
ANOTHER MONSTER ヴェルナー・ヴェーバー/浦沢直樹 共著 |
[もうひとつのMONSTER] ヴェルナー・ヴェーバー/浦沢直樹 共著 長崎尚志訳 小学館 2002
『MONSTER』全巻の副読本にしてアナザー・ストーリー。ネタバレあり。
『MONSTER』全巻を読んで、その後、その謎にもう少し迫りたいと思って思わず買ってしまった。漫画だと思っていたらそうではなくて、れっきとした本であった。ヨハン事件のあとまた新たな類似事件が起こったことから、ヨハン事件が何だったのかを改めて探る記者が事件をまとめているというルポ形式でつづられている。
『MONSTER』の一番最後のシーンは、昏睡状態にあるはずのヨハンがどうやら病院を抜け出したのでは?と思わせる終わり方であった。そしてこのアナザー・ストーリーを読むと・・・どうやらそのような気がしてくる。この辺は読み方がいろいろとあるのだろうが、私としてはそういう解釈をした。結局ヨハンはまた同じようなことを繰り返すのかもしれない。しかし、なぜそのようなことをしなくてはならないのか? 結局その謎が完全に解けたわけではない。
『MONSTER』は確かによく作られた漫画だったが、前半の方がどちらかというと『逃亡者』のようなノリもあって面白かった。後半になると複雑になりすぎてきたこと、新たな登場人物が多くなりすぎたこと、登場人物が死にすぎることが続き、テンポが落ちてしまったように思う。ヨハンは図書館で絵本を見つけて倒れるが、そこから流れがおかしくなったという。この作品もそのあたりからちょっと方向が見えなくなったような気がする。
結局最終話まで持っていたわけだが、多くの人が死に、その人たちがなぜ死ななくてはならないのかも説明不足の部分もあった。このアナザー・ストーリーにその謎が解かれているかというと、そうとも言えないような気がする。
結局ドイツとチェコを取り巻く当時の状況や歴史がわかっていないと、この作品を読み解くのは難しい。一言で言ってしまえば、洗脳し殺人兵器を作るというような誤った思想に取り付かれた実験の犠牲となったのがニナとヨハンの双子の兄弟であり、ニナはそれを克服していくのだが、ヨハンは克服できないでいるということだ。純粋な子供は大人よりも洗脳をしやすい。そして、そのような実験をし続けていくことは危険であるという警告を発しているのかもしれない。
前半のなぜテンマとニナがヨハンを追いかけるのかというのは説得力があったが、後半、ヨハンがどうしてそういう行動をしているかという説明は弱く、適当に秘密を重ねていって大げさにしているだけという風にもとれないこともない。つまり、読み進むにつれ謎は深まるが、意味を成さなくなっていくような作品であったように思う。もちろんつまらない作品ではないのであるが・・・。
このアナザー・ストーリーがどういう作られ方をしたのかがよくわからなかった。共著ということだが、誰がどういう部分を書いたのか、どこからどこまでが虚構なのかがわかりにくい。訳者というのはどういうことなのか? そして、私にはやっぱり絵本の解読ができない。なんとなく意味はわかるような気もするのだが・・・。
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