2004年01月27日(火) |
草にすわる 白石一文 |
白石一文 光文社 2003
STORY: 「草にすわる」・・・大手の会社を辞めてから病気にかかり、その後は療養生活を送る男と、家族を火事で亡くした女の奇妙な恋愛関係を描く。 「砂の城」・・・かなり名の知れた作家は、私小説のネタに家族のことを描いてきた。その特殊な状況などについて回想せざるをえなくなり・・・。
感想: 長編かと思っていたら短編が2編だった。
「草にすわる」は、結局生きるのがいやになっていた主人公が、薬物自殺を図るわけだが、助かったことにより、そこから生の素晴らしさなどに気づいていくというような感じの話。どちらかと言うとこっちの方が前向きな感じで好きだった。
「砂の城」は、作家のかなり激しい生き様がちょっと受け付けないような気もした。
しかし、どちらの小説にもただ生きているだけでいいのだという、人生を肯定するような思考が感じられ、また、生の喜びを主人公が取り戻すという内容は同じであると感じた。暗いエピソードの中で、最悪の状況に追い詰められたようなときに生きているありがたさに気づく・・・そんなものなのかも。でも、気づけずに死んでしまう人もいるから、そういう人には「草にすわる」の方を是非お勧めしたいような気がする。
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