感想メモ

2003年05月27日(火) 四日間の奇蹟  浅倉卓弥

宝島社 2003

STORY:
将来を期待されていたピアニスト如月。彼は留学先のウィーンで事故に巻き込まれ薬指を吹き飛ばされてしまい、ピアニストへの道を閉ざされてしまう。その事故で孤児となった知的障害のある千織を引き取り、2人は日本へ帰る。その後、千織にピアノの特殊な才能があることに気づいた如月は彼女にピアノを教え込み、彼女のピアノで慰問公演を時々行う生活を続けていた。ある時、訪れたセンターでの4日間とそこで起こった出来事について描く。

感想:
 最初、好きな系統の話だと思った。この本は最近ものすごく読まれている図書館でも人気があってなかなか借りられない本だ。「このミステリーがすごい」というのでも1位になった作品である。

 淡々とした描写は如月の心の様子をよく表している。また知的障害を負いながらもピアノにだけものすごい才能を示す千織についても、ありうる話だと思ったし、科学的な内容も盛り込まれていてなかなか興味深く読める。

 途中まではすごく面白かったし、これからどういう奇跡が起こるのかと思いつつ読んだ。多分千織に何かが起こるのであろうことは想像ができた。し・・・しかし・・・。こう来るとは・・・と呆然とした。私は結構不思議な話は好きだし、ものすごく受け入れられるほうなのだけれど、それまでがあまりにも淡々としていたので、なぜにこういう展開になるのか?とちょっと冷めてしまった。千織に奇跡を起こす方法ならもっと他にもあったんじゃなかろうかと。

 最後の方のピアノを弾くシーンも、多分盛り上がりのある一番のシーンなのだと思うけど、なんだか乗れなかった。でも、最後の展開とかは嫌いではなかったのだけれど。内容的には嫌いじゃないし、いい話だとは思うんだけど、いまいち乗れなかったのは文体のせいなのかな? 終わり方はよかったと思うのだけれど、実際このあとどうなったかがちょっと気になった・・・。

 ところで、「きせき」は普通「奇跡」と書くけれど、この本のタイトルは「奇蹟」。この字の違いは何かあるのだろうか? それから、一応読者投票かなんかで1位に選ばれた作品なわけだし、多分、私のような感想を持つ人の方が少ないんだろうと思う。きっとみんな純粋に感動して楽しく読んでるんだろう。あと、最後にベートーベンの「月光」。多分あの曲だったとは思うけど、3楽章が思い浮かばなかった。どういう曲だったかな。なんかとても聞きたくなった。それにこの話はこの曲を知っているのと知らないのとでも味わいには差がでそうな気がする。今度機会があったら聞いてみよう。


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