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■ 花の頃…コネタ
風にあおられた砂埃が、着物の裾を掠めていく。
「今日は、風が強いな…」
つと柳眉を顰め、日向宗家の当主は、胸の前で組んでいた腕を下ろした。
春の麗らかな季節になった。 太陽の光りは、暖かな陽射しとなって、日に日に固い花々の蕾を一気に膨らませていく。 庭に植えた梅や杏の枝には、早いもので愛らしい花弁をほころばせ始めたものもある。
ホーホケキョ
今年始めての鶯の鳴き声に誘われ、珍しく用事もなく庭に足を運んだヒアシであった。 宗家当主の座に就いてからというもの、ヒアシはその責務に追われ、一息つく暇もない日々を過ごしてきた。
ホーホケッキョ
少々調子っぱずれな鳴き声の主が、梅の枝にちんまりととまっていた。
「…鳴いていたのは、お前か?」
気まぐれに散策へ出る切っ掛けとなった鶯は、人の声に驚いたように一瞬ピタリと鳴くのを止め、黒々とした瞳でヒアシを見返した。
「フン…そう怒るな。すぐに去る…存分にそこで練習していくといい…」
今年初めて鳴く鶯を相手に、ヒアシは珍しく相好を崩して苦笑した。
「この季節がくると…妙に懐かしく感じるものだな」
そっと眼を閉じたヒアシは、瞑想するかのように深く息を吐き出した。 懐かしい季節…遠い記憶の片隅に封印されてきた思い出が、ふとした拍子にヒアシの脳裏に甦ってくる。
「……ヒザシよ。お前が呼んだのか?」
ヒアシは、今は亡き弟へ、問うように呟いた。 内に篭もるな…と、もっと外の世界の変化を見ろ…と、まるでヒアシを諌め諭すかのように、誘う鶯の鳴き声。
「全く…口煩い奴だ。フム…だが、たまには花見もよかろう」
フッと口元を歪ませたヒアシは、眼を細めて暖かな陽射しの降りそそぐ花枝の蕾を愛でた。
* * *
突拍子もなくコネタ投下。 鶯の鳴き声聞いたので、なんとなく思いついたネタです。 寝てるうーたん抱っこしながら書いたので、まとまりのない文章&メモ書き程度ですんません。 若い頃の彼らが書きたいのですがね〜そこまで持っていけない己の力なさが…。
2006年04月17日(月)
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