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ニュースプリズム:「回らない」風力発電で監査請求 揺らぐ“理想の事業” /茨城

 つくば市が、04年度から3カ年計画で市内の小・中学校全52校に小型風車75基を設置する「まほろば事業」で、期待していた発電量を得られていないとして、市民団体が市原健一市長らに事業費約3億円の弁済を求める監査請求を起こした。環境教育と、消費電力の削減の両面を持つ理想の事業が、大きく揺れている。【栗本優】
 ◇つくば市と早大は説明を
 ■事業破たん
 「回っていない風車を、児童に何と説明すればいいのか」。風車のそばで、児童が無邪気に遊ぶ傍ら、市内のある学校の教諭は頭を抱える。風力発電の一部を売電し、地域通貨として発行することで、児童らの環境教育として使う「草のNeco2チップ」事業は、事実上、止まったままだ。教諭は「児童らは地域通貨を楽しみにしていた。市は児童にもわかりやすい説明をしてほしい」と訴える。
 まほろば事業は、総事業費が約7億5000万円。04年度予算の約3億円のうち、国は約1億8500万円、市が残りの約1億2000万円を負担し、市内小・中学校19校に計23基の風車を設置した。全52校に計75基の風車が設置されて機能すれば、全校の年間消費電力の1割をまかなえ、一部を環境教育に充てることができるはずだった。
 ところが、市民団体「市井ランダム倶楽部」が調査したところ、稼働した昨年7月から11月の発電量は、見込んでいた6万キロワットの0・002%しかない103キロワット。風車は当初からほとんど回らなかった。市は環境省と協議し、2カ所に風速計を設置して、風量などの調査を開始せざるを得ない事態になった。
 ■ずさんな計画
 同倶楽部の亀山大二郎さんは「風車の設置前に早稲田大に依頼して作成された報告書に問題があった」と指摘する。
 市は、04年10月に委託先の早大に1750万円で事業調査を依頼したが、報告書に記載された年間発電量は、実際に設置された小型風車の3倍の巨大風車で算出されていた。小型風車では市の計画する年間発電量を到底見込めなかった。
 市は「報告書が提出されたのは05年3月と遅く、すでに工事の入札が始まり、事業を早急に進めなければならなかった。早大を信頼しきり、まさか架空の風車で算出しているとは夢にも思わなかった」と弁解する。
 ■説明責任
 市原健一市長は現在、「十分調査をして、年度内に機種変更や中止の結論を出す」として、05年度以降の事業を一時凍結している。市エネルギー推進室は、「早大に対し、すでに設置した風車に対する改善策と報告書の問題点の回答を徹底的に要望していく」と話す。
 市によると、1月18日に市が早大で事情を聴いたところ、早大理工学総合研究センター副所長の橋詰匠教授は「発電量の計算に使った風車は、机上の計算でつくり出した架空のもので、製作したことがないので性能は確認されていない」と虚偽の報告をしたことを認めたが、「詳細は調査中」といきさつの明言は避けたという。市民団体の一人は「風車が設置され、環境教育を楽しみにしていた児童らに、市と早大はきちんと説明すべきだ」と訴えている。

2月3日朝刊

2006年02月02日(木)
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