松本さんは、最近のインタビューでも、しきりと、 6年前のフジテレビの「ごっつ特番」が、 視聴率9%に終わったことを口にする。 あの番組が、テレビコントの作品性として、 一種の到達点とも思える出来であったのは間違いないだろう。 その賞賛がありながら、 逆に言えば、91%の"大方日本人"に、 無視されたことの恨みを、忘れないのだろう。
俺が出演した『すべらない話』の打ち上げの時、 もう大方、撮了した段階で、松本さんに対し、
俺は、 10年前の『ビジュアルバム』で、 既に世界でも通用する映像作家であることは、 証明済みであること、 映画の才能とは作品の点ではなく作品群の線であることを、伝えると、 「でも今回の映画が、それでも、無視されたらどうする?」と問い掛け、 二人同時に「次に撮ればいいんですよ」 「次を撮ればいいんやな」と同時に答えた。
きっと、この時の思いは、どんなに映画が上出来でも、 91%の"大方日本人"に、無視されることがわかっていたからだ。
確実に映画は当るだろう。 しかし、それだけ多くの人が見れば、 公開後の評価は、"否"の大合唱も大きくなるだろう。
カンヌで、殿は松本さんに、 「3本くらいは、めちゃめちゃ叩かれる。 そんなことは気にするな。そして映画を撮り続けることが大事。 最低5本は撮ってくれ!」(週刊プレイボーイ誌より) とアドバイスしたという。
きっと、松本監督は、確信を持って、次回作へと進むだろう。 選ばれた才能を持つ人の永久運動が始まる。 映画は、本来、宿命的に選ばれた才能が生み出すタモマノだ。 その『監督(誕生)バンザイ』を俺は思うのだ。
★悪童日記(6月2日)/水道橋博士★
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