「どうだった」
「確かに良い映画と言えなくもないわね。 でもどんな娯楽も基本的には一過性のものだし、またそうあるべきだわ。 始まりも終わりもなく、ただ観客を魅了したまま手放そうとしない映画なんて それがどんなに素晴らしいと思えたとしても、害にしかならない」
「ほう、手厳しいな。 我々観客には、戻るべき現実があるとでも言いたいのかね」
「そうよ」
「ここの観客の中には、現実に戻った途端に不幸が待ち受けている者もいる。 そういう連中の夢を取り上げ、あんたは責任を負えるのかね」
「負えないわ。でも夢は現実の中で戦ってこそ意味がある。 他人の夢を自分に投影しているだけでは、死んだも同然だ」
「リアリストだな」
「現実逃避をロマンチストと言うならね」
「強い娘よのう。 いつかあんたの信じる現実が作れたら呼んでくれ。 その時わし等はこの映画館を出て行こう」
★攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX/櫻井圭記★
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