宿題

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2006年12月17日(日) 落合町山川記/林芙美子
この堰のある落合の窪地に越して来たのは、
尾崎翠さんという非常にいい小説を書く女友達が、
「ずっと前、私の居た家が空いているから来ませんか」
と此様に誘ってくれた事に原因していた。
前の、妙法寺のように荒れ果てた感じではなく、
木口のいい家で、近所が大変にぎやかであった。
二階の障子を開けると、川沿いに合歓の花が咲いていて
川の水が遠くまで見えた。

私は障子を張るのが下手なので、十六枚の障子を全部尾崎女史に
まかせてしまって、私は大きな声で、自分の作品を
尾崎女史に読んで聞いて貰ったのを覚えている。
尾崎さんは鳥取の産で、海国的な寂しい声を出す人であった。
私より十年もの先輩で、三輪の家から目と鼻の先のところに、
草原の見える二階を借りてつつましく一人で住んでいた。
この尾崎女史は、誰よりも早く私の書くものを愛してくれて、
私の詩などを時々暗誦してくれては、
心を熱くしてくれたものであった。


★落合町山川記/林芙美子★

マリ |MAIL






















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