この間のベケットの柄本明さんの読みっていうのは、 ベケット学者には絶対にできない「読み」であって、 過激さスレスレの際どさなんだけど…ものすごく正確なんですよね。 あの自信はどこから来るのか!?(笑) 柄本さんのベケットの読みは、ベケットの戯曲が非常に正確に 書かれているのに対応するくらい正確なんだよね。 それは「柄本明のベケット」という論文を書きたいくらい。 なぜこのセリフを聞こえなくしたか、なぜこの部分はフリーにしたか。 演出していると本当にわかるんです。 それはもう、普段の柄本明がやれないような、 恥ずかしいところのギリギリなんです。 そして観客にはその恥ずかしさは微塵も感じさせない。 でもベケットを読み込んでいる人にとっては、 柄本明の「恥ずかしながら、やってるよ」というのが伝わってくる。
★ユリイカ総特集宮沢章夫/佐藤信★
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