ところで、商品の中でひときわ鮮やかで美しいものは絹や綿の 女性や子供の着物です。それに日傘です。 日本人は本当にこういう華やかなものが大好きです。 日本に来れば、お金持ちだけが美しいものを楽しんでいるわけではないことが すぐにわかります。 イギリスでいうとフランスの高級デザイナーの最新作品に相当するような 非常に美しくて大胆な着物を、田舎の女中の娘があかぎれの手で触っているのを見るのは面白いものです。 この娘にその一番豪華で一番高価な着物が買えるはずはないのですが、 娘と社交界の婦人との間に好みの違いはありませんし、 娘にも美しいものをめでる権利があります。 お客を平等に扱うという点では日本に勝る国はないでしょう。 急き立てる人もいませんから、娘は何時間でも好きなだけ着物に触ったり じっと眺めていることができます。
★東京に暮す/キャサリン・サンソム★
|