胸の上へ手をのせて寝ると、こわい夢みるね。 たのしい夢はどういうふうにして寝ると、たのしい夢みるかな。 顔をまっつぐあおむけにしてさ、手と足をまっつぐにのばして寝ると、 どういう夢みるかな。……ね、先生。
<(夢声氏に)ときどき、返答にこまる質問をうけるんですよ>
ぼくが質問しても、先生もわかんないときがあるね。 先生は博士だから、すこしわかるかと思った(笑)。 わかんないときもあるだな。むずかしいだな。 大東亜戦争はさ、日本からアメリカへ戦争をふっかけた。 あれはやっぱり、東条さんが命令したんですか。
━東条さんが「やれ」っていったから、戦争になっちまった。
東条さんがムリをさしたな。どうして、戦争がはじまったかというと、 日本はシナと戦争して、アメリカがシナをたすけた。 いろんな武器をはこんだ。なかなか勝負がつかないから、アメリカをやっつけてしまえば、 シナもやっつけられると思って、大東亜戦争をやった。 どうして、シナの戦争がはじまったかというと、日本が満州と戦争して、 満州をとったんだな。シナが「満州をかえせ」といったけど、日本はかえさなかった。 満州をかえすと、日本は弱くなっちゃう。 日本はもと北海道と本州と四国と九州だけだった。 北海道と本州と四国と九州だけじゃ、いくら東条さんでも、 アメリカと戦争しようと思わなかっただろうな。 明治になってから、日本はよその国と戦争するようになった。 明治になってからは、台湾をとったり、朝鮮をとったり、カラフトをとったり、 満州をとって、日本はうんと強くなった。シナもすこしとったかな。
━はじめ、占領してたね。
日本の国がうんとひろくなったから、アメリカと戦争しても大丈夫だろうと思ったんだね。
━勝てるかもしれないと思った。
勝つか負けるか、よくわかんなかったんだな、東条さんもやっぱり(笑)。
━戦争はお嫌いですか。
うん、おっかないから。
★徳川夢声の問答有用1/山下清★
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