━おなかに神様が宿られてるそうですが、いまここで話をされてるのも、 ハラが話をしてるわけですか。
そうよ、これをわしが考えてしゃべれるか。 よう考えてみんさいよ、おっさん。
━「あのね、おっさん」か(笑)。 いちばんはじめに神さまが宿られたとき、どういう感じがしました。
気がちごうたかと思うた。 パッパパッパ、口がしゃべりはじめた。 いまでも、ちいとあんたにゆずって、だまろうと思うても、パッパッと口がいごく(笑)。
━神さまの仰せだから、こっちもだまってきいてるんです(笑)。 ハラのなかに入ったという感じは、実際にあったんでしょう。
ハラがブスブスいごいたよ。 いまはひとつもいごかん。なぜいごかんか。 「われでも寝たときに寝ぐつがわるけりゃあ、グスリグスリいごこうがな。 神人合一で、われとおれとが合うたけえ、いごいちょるのがわれにゃわかるまあがや」 て、ハラがいいよるよ。
━ときどきいいますか。
いうよ。わしアいつも、ハラとけんかするんじゃけえ(笑)。 わしはおサヨちゅう名がきらいなんじゃが、ハラが「おサヨや、おサヨや」 ちいいやがるけ、しゃくにさわるけ、「うん」ちゅうちゃるのよ。 そうすると、「うん、ちゅう返事があるか。はい、といえ」ちゅうで、 しかたがなあけ、「はい」ちゅうちゃる。 ほいじゃけん、無我とはそこよ。 正しい神の教えを「はい、はい」ちゅうて…。
★徳川夢声の問答有用1/北村サヨ★
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