やおろずの神とは、人間なのよ。偶像もいらにゃ、祭壇もいらにゃあ、お墓もいらん。 線香もいらにゃあ、おさい銭もいらん。
━おさい銭がいらないってのは大賛成です(笑)。
「コジキ坊主に、めしの食いおさめさせる」ちゅうて、 一九年からわしのハラがいいよるんじゃもの。 尋常六年しかいかん百姓のばあさん、証書もなけりゃ免状もない。 じゃが、宗教に免状があったらウソよ。 まあ、バカがどのくらいしゃべるかね。 あんた、えらいひとにたくさん会うたろうが、わしほどのバカに会うたのは、 きょうはじめてじゃろ。はじめてじゃから、しっかりためしなさいよ。 むかしから、バカと地頭にゃ勝てんちゅうが、地頭に勝っても、わしのバカに勝てるか。 勝ったら、あんたに首やるよ(笑)。
━はじめから、勝とうなんて思っておりません(笑)
あたまがカランポウで、うちでひまがあったら、コエタゴかつぐ百姓のばあさんじゃが、 「ウジの世界を乗りとれ」て、わしのハラがいうちょる。 (卓上に茶菓をはこぼうとするのを制して)たべるものをわしのまえへおかんように。 ほかのひとにゃ、遠慮なく出しんさい。水だけアこうして飲むけ。 (と、ビンにつめて持参した水を飲む)
━水も井戸の水でなきゃあいけないんですか。
いや、いや、便所のところの水道の水をいれてきたんよ(笑)。
━便所の水は、ちょっと……。
どこでもあんた、水源地はおなじじゃもの。
━ところが、人間は観念でものを食ったり飲んだりしますからね。
わしア観念で食わんよ。なに食うても、毒にもあたらんし、病もつかんのじゃけん。
━(菓子をとりあげて)こういうものは、いっさい食わないんですか。
食うときにゃ食うよ。間食はせんことにしちょる。はじめにひとつ、うたおうじゃないか、 あんたが菓子食うちょるあいだに。
━拝聴しましょう。食いながらでもよろしいですか?
ああ、食うたり飲うだりしながらききんさい。 わしがうとうちゃげりゃ、あんたの舌の調子もよう合うじゃろ(笑)。
<歌が1ページちょっとつづく>
ちゅうのよ。…わかった?
━わかりました。
いい相棒になるかもしれん。いっしょにつれて歩いちゃるかな(笑)。
★徳川夢声の問答有用1/北村サヨ★
■北村サヨさんは戦後の新宗教「天照皇大神官教」の教祖。 昭和31年の対談。
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