川本 もう一回生まれ変わったらどうすると言われたら、同じことをしたいですね。
ユーリー 私は違います。またアニメーションをやろうと思ったことは一度もありません。 とにかくまったく偶然、こうなってしまった(笑)。 アニメーションを作るのは、この家を見て、 ちょっと組み立ててはカメラの前に行ってチョコンと置く。 立て直しては、カメラを覗いて、またチョコンと置く。 すると医者が来て、「診察室に行きなさい」。 私にとっては、そういうことですね。
川本 そうだったんですか、スタジオに人がいなければ、 いつもあのグルジア料理の店にいるよ、って言われてたんですよ。
ユーリー 実はこれが人の感情に共感することなんです。 当時、モスクワで唯一のグルジア料理のレストランが、 朝早くから熱いスープを出していました。 二日酔いの連中が頭をすっきりさせるために来る(笑)。 この酔っ払いたちがおもしろくて、観察するんです。 それから自分の重い脳を開放するためにね。
★共感するということ/川本喜八郎×ユーリー・ノルシュテイン★
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