平山 自主映画ってひどいじゃん。オレらのころなんて四畳半もの撮るような 異端の人たちもたくさんいてさあ。 今でも覚えてるけど、朝っぱらから鷲ノ宮のほうまで撮影に行ったら、 女がトランプでピラミッドをつくるってシーンだったわけ。 貼りゃいいじゃん、そんなの。それをマジでやってるんだよ。
中原 ハハハハ。
平山 「リアリティだよ」とかいってるのよ、先輩は。 とんでもねえキチガイにつきあっちゃったなあと思ってさ。 何回やっても崩れちゃって、イライラしてくるわけ。 そしたらそいつ「うう、リアリティがみなぎってるう」とかいっちゃってさあ。 お前への殺意がみなぎってんだっての。
◇ 中原 最近は映画とか見ないんですか?
平山 一応『AVレビュー』とかの連載もあるから見てるよ。 そこにエクササイズ用の自転車あるでしょ。これこぐときに見るのよ。 選択を間違えると悲惨でね、『永遠と一日』とか(笑)。 『用心棒』は良かったね。 俺ももうちょっと大きくなったら用心棒になろうって思ったよ。
中原 いつなるんですか(笑)
平山 あと、ヴォーホーベンの『ロボコップ』も良かったね。 あそこまで刺すとは思わなかったよ。
中原 ハハハハ。
平山 可愛そうだったよね、クラレンス・ボディッカーも。 あんなに接近しなきゃよかったんだよね。浅墓なとこだよな。ううううとかいって。
中原 (爆笑)
◇ (中原さんの「そもそも書くのキライ」とか「書く原動力はお金」とか 「人が求めないようなものを書いてもそれをまた求められるのがヤ」みたいな発言に)
平山 多分書けないのはね、まだ中原さんは、いいもの書きたいんだよ。
平山 なんか、いいもの与えようとしてんじゃない?
平山 退屈なものは書いていいんだよ。 退屈であってつまらなくないものを書きゃいいんだよ。
平山 でも、オレ、中原さんなんかは、ヘンな言い方だけど、 わりと近い人だなってずっと思ってたんだよ。 たぶん基本的には「怒る」人なんだと思うんだ。 でも、一回祝福されちゃったじゃん。 あれがきっと、ちょっと嬉しかったんだよね(笑)。
中原 いやあ、内容的に本当に祝福されたとは思わないですけどね。 お金貰えてよかったってのは嬉しかったけど。
平山 でも、寒いときに、「お前、ちょっと焚き火当たってけよ」 って言われたら嬉しいじゃん。だけど、そこで「雑音」が入っちゃったんじゃないかな。 中原さんは「耳」の人だから。音楽やってたり、耳の生活の人だから、 耳から入ったものがハートの奥まで入っちゃうんだよ。
中原 うーん。
平山 だから深層心理にひっかかって、動けなくなっちゃうんだよ。
中原 そうかもなあ。
平山 でも、大丈夫だよ。ものすごく頭に来るときが必ず来るから。
◇ 平山 今はそうすることで抗議してる訳。 そういうときは、何もしなくていいんだよ。 焚き火に当たったことによって変ってきた部分を、 もう一度焚き火に当たりつつ当たらない自分にしたいのよ、 当たっちゃった自分を「ああよかったな」って思う部分もあったわけじゃない。 でも、本当によりどころにしてた「怒り」の部分てのは、 当たってないあの凍てついた道路にあったわけでしょ。 アレを取り戻すためには、動かないことも重要なんだろうね。
◇ (最後に) 中原 いやあ、来た甲斐がありましたよ。 ここまで心に響くいいことをいってくださる方だとは思ってなかったといったら ものすごく失礼ですが(笑)。
★エーガ界に捧ぐ/中原昌也×平山夢明★
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