私は今でこそ幸運に恵まれてなんとか生きつないでいるけれども、 子供のころはまったく世間とかみあわないで、 自分の未来の姿というものをどうしてもつかめなかった。 どういう生き方もできないで、 どこかで行きづまって窮死するのだろうと思っていた。 それで世間のほうを見渡して、自分と同じように、 社会から落ちこぼれて窮々としている人は居ないものかと思う。 それらしき人間がみつかると、同胞を見つけたように安心してその人の行末を眺めていた。 落ちこぼれといってもいろいろなタイプがある。 中学に受験の手前のころだったと思うが、さすがに不安で それと思える人たちの名前をノートに書き並べて番付を作ったことがある。 自分一人で、それを駄目番付と称していたが、むろん、 私自身がその中の大きな位置を占めていたのである。
★なつかしい芸人たち/色川武大★
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