かつてのベルセレボン人は、近隣の種族にとっては激しい嫌悪の対象であり、 劣等感を刺激される存在だった。 というのも、銀河系でも指折りに知的で、洗練されていて、 そしてなにより非常に静かな文明を築きあげていたからである。 これは胸が悪くなるほど独善的でけしからぬ行為だというので、 銀河帝国裁判所はベルセレボン人に罰を科した。 このうえなく残酷な社会的疾患、すなわちテレパシー能力を与えたのである。 その結果、ちょっとした考えが頭をよぎっただけでも、 半径10キロメートル以内のあらゆる人にそれが伝わってしまうことになり、 これを防ぐためにいまではたいへんな大声で、 それもひっきりなしにしゃべりつづける破目になった。 たとえば天候のこと、ささいな身体の痛みや不調のこと、午後の試合のこと、 そしてカクラフーンがいきなりやたらとやかましい場所になってしまったことなどを。
★宇宙の果てのレストラン/ダグラス・アダムス★
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