余談だが、いまの若い連中は、これは私の悪影響かもしれないが、 落語の枕やネタで普通の話をする。 普通の話とはドラマ性もギャグもない話のことだ。 威張るようだが、この普通の話を聞かせ、もっとキザにいえば、 それを芸にしているというのは、そうめったにはいないんだ。 普通の話で爆笑を誘うてぇのは、俺の特異体質なので、それをみんな真似するようになっちゃった。 が、感心しない。 まだ、季節の話、風物詩でも喋っているほうが、昔の落語家みたいで、まだ我慢ができる。 例えば、米丸さんの若い頃のネタで、人間はハヒフヘホで笑うもので、 アハハ、イヒヒ、ウフフ、となるが、それをパピプペポにしたらどうかというやつ。 「やあ、いい天気ですな。パパパパ、ピピピピ。」 音で笑わすというのは、単純だからわかりやすい。 ところが、この節みんな噺のまくらに意味をやるようになっちゃった。 それも普通の世間話をやるからなおつまらない。 狂気も冒険もない奴の、普通の話なんか誰が聞くものか。
★談志楽屋噺/立川談志★
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