世の中なんざぁ判っているつもりでも、ほとんど判っていない。 精々判って正常、異常、精神病、の類あたりまでで、 人間の本当の気持ち、了見、その行動なんて判らナイ。 判らないから、どこかに線を引いて、昔の大道の商人ではないが 「お客さん、この線まで、この線まで」ってなもんで、 その線までの理解を世間では、一般常識とか言っているのであろう。…… してみりゃあ常識とか、正常なんざぁ、ほんの少々、 皆が判ることだけをまとめたに過ぎない。 で、落語てなぁ、常識でまとめられない部分、 つまり非常識と世間一般にいわれている行為、思考を肯定し、 それを語ることを売り物にしながら、 その奥にある人間にとって何だかワカラナイもの、落語のフレーズでいうと 「夢でオナラを踏んづけたような」もの、 つまりフワフワして混沌として、辻褄の合わないような部分にまで入り込んでくる。
★新釈落語咄/立川談志★
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