「空中ブランコ」という曲を、これは郷ひろみのアルバムの中に入るんだけど、 どういうことかと言うとね、多分、空中ブランコの中には、 「ひょっとすると落っこちるんじゃないかな」って大前提があると思うんですよね。 その大前提を持って、曲芸を見物するわけなんですけど、あー落っこちる、 キャー危ないハラハラハラ、あー終わった落っこちなかったおもしろかった、 といって刺激を充分に受け、満足して帰っていくんじゃないかな。 僕たちにとって、それはすごく過激なことなんですよね。 そういうサービス、きわどいところでのバランス感覚としてのサービスが、 サービス精神を持つことも含んで、ものすごく過激なんだよ。 今一番過激なのは、サービスをしている事なんじゃないのかな。 血や暴力から完全に遠ざかったところでさ。
★宝島6月号(1983)/坂本龍一★
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