この母親のダイナマイト心中の話は、人にはほとんど話したことがなかった。
僕は話が下手だから、この話をするとだいたい雰囲気が暗くなる。
そのむかし、暗いものが流行っていた時代に、親しかった年上の人に話したことがあるのだが、
「それがスエイくんの売り物なんだね」
と言われて、それ以来二度と話さなかった。
いまとなっては「売り物にしてなぜ悪い」なんて居直れるほど生きてきたのだけど、
当時は僕も多感な青年だった。
「売り物なんだね」という言葉に傷ついて、なぜか僕は真赤に赤面してしまったのだった。
★素敵なダイナマイトスキャンダル/末井昭★
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