彼の特徴は、ひとことで言えば、能力の平均値の高さ、だと僕は思う。
◇
思うに、彼が常日頃僕にぼやくように、仕事上、あるいは人間関係上のトラブルが生じるとすれば、
それはこの能力の膨大な差が原因であるに違いない。
人は、自分がトラックをようよう一周する間に、二十周くらいしてしまう人のことを
そうそう理解できないものだ。体力、筋力、そして情念をも含めて、
幸か不幸か、彼はそういった高い能力を備えてしまっている上に、
彼自身それを熟知しているのである。
この世の多くの人がうんうんうなって進める、例えば職務的なデザイン作業など、
彼が一時間で出来ると言うなら、それは本当に出来るのであって、
彼はその二十周先くらいのことで思い迷ったりしているのである。
たとえ彼の口上が与太に聞こえようとも、
彼の制作はそうした地点で行われているということを、僕達は思い知っておいた方が良い。
彼はその能力の全てを注いで、結局のところ誰もわかっていやしない、
この世にあるかどうかさえうかがいしれぬ、「憩」という概念を
たった一人で支えているかもしれないのだ。
★僕の沼田さん像/寺門孝之★
■寺門さんは沼田さんに 「それはどういう狙いですか?」 (待ち合わせをしていて、出会った瞬間に服装について) 「雑巾が腐ったような匂いがしやしませんか?」 (寺門さんの家に遊びに来て、ソファに座った瞬間に) とか言われるみたい。
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