ぼくは工業高校を卒業しまして、森永乳業に入ったんです。
つまらないんで一か月たたないうちにやめちゃったんですけど。
◇
(清水崑さんのところで書生をしていたことを)
びっくりしちゃったんですよ。漫画家というから、ニコニコしながら、
くだらないことばっかり言っていて、ときどきああいう絵を描いているんだろうと、
だいたい思っていたんです。
◇
(桂三木助師匠のところで書生をしていたことを)
なんてバカバカしいことだと思ったけれども、この世界はこういうものだろうなと思ったから、
半分、野次馬的なものがありましたが、やっていたんです。
◇
ぼくはなにも知らないんですよ、落語のことも興味なかったし。
いまでもあまりないんですけれどもね。
◇
私はね、けっこういろんなことができるんですよ。襖も張れるんですよ。
◇
(バクチはぜんぜんダメですか、と聞かれて)
興味がぜんぜんないんですよ。
ぼく、同じところにずっといるのが大嫌いなんです。すぐいなくなっちゃうんですよ。
◇
(スポーツ番組のキャスターをした時に)
変なところへきちゃったなと思って。まあ、月々まとめてお金をくれるし、
マイク持ってるからやんなくちゃいけないし、いやだなと思って。
同じようなユニフォームで交代して打ってるけど、
どっちが敵だか見方だかわからないんですよ。
風は強くなってくるし、西日は強くなってくるし。
いい席なんですけど、放送をやるくらいですから。
「後楽園球場には林家木久蔵さんがいっております。木久蔵さーん」って呼ばれたんです。
「はいはい、後楽園球場の木久蔵です。
いま西日が大変強く、コーラのビンにそれが映ってきれいです」
「コーラのビンなんかどうでもいんです。勝負はどうなってんですか」
「よくわかんないんですけど、この場合ピッチャーとキャッチャーは味方同士なんでしょうか」
って。ダメだなと思われたらしくて。その日はスポーツのワイド番組なんです。
今度は蔵前の国技館。お相撲さんにも興味ないんです。
ぼくの隣に解説の人がきたけど、肘掛にお腹が乗っかっちゃってるんですよ、
ダボーンて。こわいんですよ。
◇
襖張ったり、漬物をつくるのが好きなんです。漬物はうまいですよ。
◇
嫌いじゃないんです。興味がないんです。
◇
(女の人の好みの話で)
ぼく、うちのかみさんもそうですが、でっかい人に弱いんです。
ぼくを見おろすような人が好き。見おろされるとゾクゾクしてくるんです。
◇
安心するんです、すごく。
ああ、こんな大きい人も元気でいるなあと思うと、自分もうれしくなっちゃう。
◇
本当に大変だと思う、ぼくらより大きいからだの仕掛けを動かすのは。
なおかつ元気だから、大丈夫だなあと安心する。
★躁鬱対談/吉行淳之介×林家木久蔵★
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