色川 だって治しようがわからないんじゃ、あなたは確かにナルコレプシーですと言われただけじゃ、
(病院に)行ったって行かなくたって・・・。
それで、自分が特徴だと思ってたものが単なる症状じゃないかという気が、
今してるわけです。
吉行 ただ、特徴と症状は非常に密接に絡み合ってるでしょう。
色川 絡み合ってますけれど、単なる症状なんで、この病気が治ったら
まったく特徴のない男になっちゃうじゃないかと思って(笑)。
◇
色川 映画館とかそういうところは普通の日は午前中やってないんですよ。
ですから上野公園の草むらなんかでやっぱりうずくまってるんですけれど、
相撲がはじまるとそっちへ行って、出世しそうもない悲しいのを自分とだぶらせて一生懸命・・・。
吉行 それは小学校の時ですか。
色川 小学校から中学にかけて。
吉行 その年齢で、出世しないという感覚というのはどういうんだろうね。
はみ出しているということですか・
色川 とにかくどうするんだろうと思ってドキドキしちゃうんです。
自分もどうするんだろうと思ってるわけですからね。
★吉行淳之介エッセイ・コレクション4/吉行淳之介×色川武大★
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