宿題
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2004年04月28日(水)
舌鼓ところどころ/吉田健一
支那のワンタンでは、うどん粉は皮で、その中に豚肉が一杯詰り、
はち切れさうなのを皮の上から又指で押し返した跡が幾つもついてゐて、
恐ろしくでつぷりした莢豌豆のやうな形をしたのが、
支那でしかない匂ひが立ち昇る汁の中に互いにぶつかり合つて沈んでゐる。
そしてその一つを口の中に入れた瞬間が大事なので、皮が破れると同時に何とも言へない、
ただ食べることを誘ふばかりの匂ひがする汁が豚肉と一緒に流れ出て、
後はその通り、ただもう食べるだけである。
★舌鼓ところどころ/吉田健一★
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