でも怒りよりも悲しみの方が大きくて俺はうまく怒れなかった。
俺はもう本当は犬のことなんてどうでも良かった。
それよりも二郎が俺を挑発して俺を怒らせようとしていることのほうが悲しかった。
二郎は俺を拒絶したのだと俺は思った。
二郎はそのノートにたくさんあるはずのもっとまともな詩を読まずに
その馬鹿げた詩を読んだりでっち上げたりすることを選んだのだ。
俺は泣きたくなって立ち上がって二郎の部屋を出た。
走って飛び出したかったが俺の動揺をそこまで見せてやるのは癪だったので
ゆっくりと歩いて部屋を出た。二郎は俺の背中に下品な高笑いを浴びせた。
最悪の二郎。俺のクソ兄貴。
でも俺を拒絶している。
俺は捨てられたのだ。俺は俺の虚しい試みを悔いた。
あの二郎を捕らえなおそうなんて馬鹿げてた。俺はやっぱり阿呆だった。
★煙か土か食い物/舞城王太郎★
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