「狂っちゃうかも知れないよ。松尾ちゃん。このまま狂っちゃうかもしれないね。
八人前食っちゃったもんね。あたしもいろいろいろいろやってきたけど、一気に8ヒットはないよ。
頭壊れちゃうかもね。でもね、でも、あたし、全然平気だよ。
松尾ちゃんと狂えるんだったら全然平気だよ。1人で狂うのは淋しいけど。
一緒に狂うんなら大丈夫だよ。だって、言葉通じるもん。松尾ちゃんにだったら言葉通じてるもん。
あたし、学校でも家でも実はね、言葉通じてるって思ったことわりとないよ。
でも、松尾ちゃんには最初から言葉通じてるって思ったし、
こんなてんぱってても会話になってるし、最強のカップルだよ。
わあわあわあわあって聞こえないもんね。ねえ、狂わなかったら、儲けもんだけどさ、
狂ったら狂ったであたし松尾ちゃん好きなこと変わらないし、狂ったなりの世話ができるよ。
トイレがさ、おもしろくなってから、凄い凄いあたしも訳わからなくなってるけど、
全然叫びだしたりとか、そういう不安ないよ、楽しいもん。
この楽しさがずうっと続くっていいじゃん。
松尾ちゃん、ほら、失うもん多いから不安になって叫んだり物壊したりとか、
そういうことし始めるかもしれないけど、あたしがこういう風に頭撫でてあげるから、
ね、したら落ち着くでしょ。明日まで我慢して元に戻ってなかったら、千葉に行こう。
電車に乗ってる間がちょっと勝負だと思うけど。酔っ払ってるふりしてさ。
千葉に行ったらしめたものだよ。お父さんの前でわあわあ言ったらあの人絶対
あたしたちのこと病院なんかにやんないから。部屋に閉じ込めるから。
そしたらもう、ずうっと安心して狂っていられるからさ。
ね、変になっても松尾ちゃん優しいしさ。あたしも全然優しくしてあげられるし。
松尾ちゃん、安心して狂っていいんだよ」
★宗教が往く/松尾スズキ★
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