吉田日出子──
今も芝居をしていて、なんか変なものでありたいなって、すごく思うんです。
役を上手く演じるというよりも、なんかギクシャクッとしたものでいたいなって。
スムーズなものよりも違和感があるもののほうが、
お客さんの中にググググッと入っていけるかなと思うから。
そういう風な存在として舞台にいたいっていうのが、願いとしてありますね。
松尾──
珍しいですよね。女優さんで、そういう異物になりたいって考えてらっしゃる方、
あんまりいないんじゃないですか。
吉田日出子──
そうですかねぇ。例えば「上海バンスキング」っていうのは、とても良くできたお芝居ですよね。
でも、ああいう芝居をやっていると「今のは何だったんだろう?」っていうようなことを、
すごくやりたくなるんですよ。
だから、もしも自分が宙返りできたら、全然関係ないときにボーンとやりたかったですね。
みんなが「ああ、まどかさん」とか思って観ているときに、
それを裏切りたいっていう気持ちがすごくあって。
でも、なかなか裏切れなくて、それがすごく悔しいなぁって思ったり。
だいたい舞台に立つと、みんなお客さんに好かれたいって思ったりするじゃないですか。
松尾──
僕はかわいくありたいと思ってますね(笑)。
◇
大竹しのぶ──
私、前に古田(新太)さんと一緒に野田(秀樹)さんの舞台をやったとき、
ギャグを言わなきゃいけないところがあったんだけど、全然受けなかったの。
「なんてきさくなお姫様だ」「きさくは木を切る」……っていうギャグなんですけど、
結局、削られちゃって(苦笑)。
松尾──
それは野田さんが悪い(笑)。
恥ずかしいときは、恥ずかしいようにやればいいんじゃないですかね。
私のせいではありません。脚本に書いてあるんです。あんたのせいだー!って。
◇
串田和美──
1回「武器持たないでばーっと戦場に来ちゃったみたいな出方をする」って言われて。
僕はその後、松尾さんの芝居を見て「ああこの人も武器持たないで出てきちゃってる」
という感じがしたんだよね。
まあ、自分のことはよくわかんないんだけど
串田和美──
昔は半分洒落なのか何なのか、殴り込みとかあったからね。
松尾──
串田さんはそういうの嫌いでしょ?
串田和美──
うん。だって照れくさいじゃない。殴り込みなんて、笑っちゃうよ。
◇
柄本明──
普遍的なことをやってますからね。志村(けん)さんは。
それに、そもそも「新しさ」って何なんだろう?
考えてみれば、それも漠然としたことだからねぇ。
実際僕なんかは「だいじょぶだぁ」を見ていても全然飽きないんですよ。
たぶん、見てるところが違うんでしょうね。
僕の場合は、志村さんの“役者としての何か”を見てるから。
だから、深夜にやってる「笑う犬の生活」とかは、僕はダメなんだよね。
面白いと思えない。松本人志なんかは面白いと思うんだけど。
柄本明──
なんかさぁ、学芸会になればいいと思うのよ。
学芸会ができればねぇ。ああいうのを見ると、すごく感動するんですよ。
やりたいヤツもいれば、やりたくないヤツもいて、でもすごく並列なものを感じる。
まあ、いろんな言い方があるんだけど、上手さとかそういうものが
武器になってないって言うのかな。
◇
河原雅彦──
そういえば、僕、大学3年生ぐらいの時に、「ぴあ」の“はみだしYOUとPIA”
で大人計画さんが新人を募集してる記事を見て、やや惹かれるものがあったんですよね。
あれで応募してたら、僕の人生もだいぶ変わってただろうな。
僕も「キレイ」とか出てたのかな?
オーディションで落ちてたら、芝居やってないかもしれないし。
松尾──
そういう分かれ目はあるよね。
僕も東京乾電池のオーディションを受けそうになったことがあるんだけど、
野生の感が「つぶされる」ってささやくから(笑)、ギリギリのところでやめたんだよね。
松尾──
なんだろうね、宮藤は。どんなセリフでも、自分のセリフにしちゃうんだよ。
上手いとか下手じゃないんだよね。ほんとに素人だっていう時から、
セリフをしゃべらせると、宮藤のセリフになってたんだよなぁ。
例え、手をぶらぶらさせながら言ってても。
★演技でいいから友達でいて/松尾スズキ★
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