でも、昨日、僕はもう「明日演奏できないんじゃないか」とまで思っていて、
それは去年の4/19のオンエア・イーストよりもずっとずっと酷くて。
それで、何気ない、特に何か用事があるわけでもない、
知らない女性からの数行だけのファンメールに
「明日は雨みたいですね。頑張って下さい」と書いてあって、
それを読んだ瞬間に何かが覚醒して。
「そうか。明日は雨が降るのか」と思っただけで。カードが裏返ったみたいになって。
天使をぱっと見つける才能が、どうやら僕にはある。昆虫採集みたいな。
ふっと横を通り過ぎる。一番酷いときには、でも必ず一瞬横切る。
彼女に感謝します。雨は降らなかったけれど。
勿論。御来場下さった、沢山のドレスアップした紳士淑女の皆様にも。
僕は、ジャズをドレスアップ文化に、ほんの僅か。数パーセントで良いから。
取り戻したくて帰ってきたような物なんです。
そのためには、ドレスアップすればするほど染みるサウンドを発さなくてはいけない。
ドレスアップが、ドラッグの代わりになり、ドレスアップによって、
幼少期からやり直せるような音楽。
「菊地さん。ほら。ちゃんとシームが入ってるでしょ」と見せに来た子猫ちゃんは、
一匹だけだったけど(笑)。
★journal(11月6日)/菊地成孔★
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