「その子、シャベル使ってるのを見ると期待しちゃうの。
何かいいものが出てくるって思ってるのよ」と言った。
前にシャベルで土を掘っていたら、五センチ程度のちょっと色のきれいな
貝らしきものが出てきたことがあって、それをニコベエはものすごく気に入ったらしい。
気にいって前足にはさんで長いこと舐めてニオイを嗅いで眺めるというのを繰り返し、
いまでもその貝をたまにどこかから引っぱり出してきては眺めているのだという。
「ニコベエのコレクションっていうのがあるのよ。緑色の小さなボールとか
下の子のルミの箸とか──。
どこかにしまっておいて、たまにそういうのを掘り出しては、並べて眺めてるの」
★この人の閾/保坂和志★
|