宿題

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2003年09月08日(月) 点子ちゃんとアントン/エーリヒ・ケストナー
「ねえ、笑いごっこしない?」

点子ちゃんは、アントンがやりたいか、やりたくないか、まるでおかまいなしに、

アントンの手を取って、つぶやいた。

「ああ、ああ、笑う気分じゃぜんぜんないわ。あたし、とっても悲しいの」

アントンは、きょとんとして点子ちゃんを見た。

点子ちゃんは、目を見ひらいて、おでこにしわを寄せている。

「ああ、ああ。笑う気分じゃぜんぜんないわ。あたし、とっても悲しいの」

点子ちゃんはくりかえした。それから、アントンをつねって、ささやいた。

「あんたもやるのよ!」

アントンは点子ちゃんの言うとおりにした。

「ああ、ああ、笑う気分じゃぜんぜんないわ。あたし、とっても悲しいの」

「あたしこそ」

点子ちゃんは、ぐっと気持ちをこめて、つぶやいた。

「ああ、ああ、笑う気分じゃぜんぜんないわ。あたし、とっても悲しいの」

そして、ふたりの目が合うと、ふたりともわざとらしい悲しげな顔つきをしていたので、

げたげたと笑いころげた。

「ああ、ああ、笑う気分じゃぜんぜんないわ。あたし、とっても悲しいの」

こんどはアントンがやり始めて、ふたりはますます笑いころげた。

しまいには、目をあわせることもできなくなってしまった。

ふたりは笑って笑って、とめどがなくなり、息もつけないほどだった。

人間のほうが、立ち止まっている。ピーフケは、おすわりをした。

このふたりも、とうとうおかしくなったか、とダックスフントは考えた。

点子ちゃんはピーフケをだきあげた。そして、子どもたちは歩いていった。

けれども、ふたりともそっぽを向いていた。

そして、点子ちゃんが何度かくくっと笑って、笑いごっごはおしまいになった。

「あーあ!」

アントンが言った。

「くたびれた。完全に笑いすぎだ」

アントンは、笑い涙をぬぐった。


★点子ちゃんとアントン/エーリヒ・ケストナー★

マリ |MAIL






















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